一方でトランプの大統領としての正当性を否定する国民は、この大統領の4年任期をいかに短縮させられるか、いかに民主的に降ろせるか、弾劾することができるかに取り掛かっている。就任式の参加人数はトランプ大統領がメディアの偽りだと憤ったほどに少なかった。しかし翌日の反トランプデモは国中に、大規模に展開した。その後も次々と多くの都市で抵抗の人波が出来ている（写真）。アメリカの市民社会は今、日々、トランプの政策を精査しつつ、反対と抵抗の活動を担う市民組織が生まれている。これらはいずれ市民セクターの研究対象となるものだが、今、そのひとつ、「最初の百日抵抗100 days Resistance」運動を取り上げてみる。これは大統領に持続的に反対しようとするものである。

ここには12の活動項目があげられている。

１．あなたの地域の上院議員、下院議員にトランプの課題に反対することを公約させること。彼の閣僚指名人を拒否し、彼らの任命手続きを引き伸ばし、立法の聴聞から引き上げること。

２． デモと行進行動。女性行進や、月例の反ヘート・差別行進によって、意志。メッセージの発信を続けること。

３． あなたの都市または州が、不法移民、特に小さい時から暮らしてきた人たちを、連邦政府による国外退去から庇護すること。

４． トランプ製品、不動産、ホテル、リゾート、すべてをボイコットすること。

５． あなたの取っている新聞の編集者と投稿欄に投稿し手紙を出すこと、トランプの最初の100日の政策と動きの虚偽と危険性を途切れなく指摘し訴え続けること。

６． ソーシャルメディアに日々、トランプが何をしたか、地域での反対行動をアップすること。

７． ACLU（米国市民自由連合）コモン・コーズ、南部貧困法律センター、経済政策インスティテュート、不平等メディア、その他の最も効果的な反対グループを支持、寄付すること。

８． 抵抗運動を目に見えるように、車のスティッカー、襟ピン、手首バンドを着けること。

９． あなたの州や地域レベルでの、進歩的な改革目標と政策を推進すること－環境改革、累進課税、最低賃金値上げ、選挙区割り不公正是正、大量施設収容阻止等、連邦政府がやるべきことのモデルとすること。

１０． 選挙人カレッジ（electoral college）を廃止し、あなたの州の選挙人が、ポピュラー・ボートで勝った大統領候補を選べるようにすること。

１１． 独立支持者、トランプ支持者にも、連絡を付けて、この課題に賛成する人たちを巻き込むこと。

１２． ここまで来た。家族、友達と週末に会おう、そして何が出来るかを決めよう。

この行動ガイダンスをもとに、1日1時間を割こう。

　
デモクラシーの最後の砦は市民社会である。トクビルが最も印象付けられたアメリカの市民社会、コミュニティー組織、企業、NPO組織（事実に基づいた政策分析を行い、我々の生活を守るデモクラシーの規範に関わるシンクタンクを含む）によって成り立ってきたが、この市民社会、市民セクターは、トランプ政権において、その根底の価値を揺るがされ、存在を揺るがされることになる。

　アメリカとさらに西欧社会のデモクラシーの縮小はロシアや中國の力の強化につながり、新たな極めて危険な戦争への道を開くことになりかねない。トランプの登場とその実行を、他山の石と見過ごすことは出来ない。デモクラシーの失敗した国々は、その統治制度が出来ていなかったわけではなく、それらの統治システムを機能させるに足る、デモクラシーの価値への市民のコミットメント、関与の脆弱さに原因があったことを忘れてはならない。