20世紀の歴史に学ぶ20の教訓 On Tyranny より抄録
1. Do not obey in advance.
前もっておもんぱかって従うことなかれ。忖度してはいけない。権威主義の権力のほとんどは自由に与えられるものである。その時に、個々人はより抑圧的な政府が欲することについて先んじて考え、そして自ら、権力に身を捧げる。適応する市民はこうして、権力に権力ができることを教える。先を見越した服従は政治的な悲劇である。
2.Defend institutions.
制度、組織を守ること。我々に生活しやすさ、礼儀正しく、礼節をたもたせるように助けるのは、制度組織である。制度組織はまた我々の助けを必要とするものである。彼らに代わって行動することによって、組織をあなた自身のものにしない限りは、我々の組織だと言ってはいけない。制度組織は自らで彼ら自身を守ることはできない。それぞれが最初から防御しないなら、次々に崩壊する。それだから、一つのあなたが関心を持ち気遣う組織、法廷、新聞、法律、労働組合などを選び、そしてその側に立つことだ。
3. Beware the one-party state.
1党独裁国家に注意せよ。国家を再建し、敵を抑圧した党派というものは、最初から全能ではなかった。彼らは歴史的瞬間を彼らの反対者たちの政治生命を不可能にすることに使った。それだから、複数多党制度を支持し、民主的選挙の規則を防御しなければならない。できる限り、地方と州の選挙で投票しなければならない。自分自身が選挙に出ることを考えよう。
4. Take responsibility for the face of the world.
シンボル・象徴を取り除け。人々は模倣する。責任を持て。今日のシンボル・象徴となるものは明日の現実となる。鍵十字やほかの嫌悪のしるしに注意しなければならない。目をそらしてはいけない。そして、それに馴染んではいけない。あなた自身で取り除くこと、そして他の人たちがそうするように例を示すことである。
人生は政治的なものである。それは、世界が、あなたがどう感じているかを気遣っているからではなくて、世界はあなたがやることに対して反応するという意味で、政治的である。
5. Remember Professional ethics.
プロフェッショナルの倫理を忘れてはならない。政治的リーダーたちが、否定的な事例となるとき、プロフェッショナルによる公正の実施実行への関与は重要になる。弁護士なしに、法の支配の状態を倒すことは困難だ、判事なしに裁判を行うことも難しい。権威者は従順な公務員を必要とする、そして、強制収容所長は低賃金労働に関心を持つビジネスマンを求める。
6. Be wary of paramilitaries.
準軍事組織に警戒せよ。制度に反対すると主張する拳銃を持つ男たちが、制服を着て、たいまつをかざし、指導者の写真を掲げて、行進するとき、終局は近い。リーダーを支持する準軍隊と公的な警察と軍隊が混成されたとき、終局が来る。
7. Be reflective if you must be armed.
武装しなければならない時には、熟慮せよ。もしあなたが公務として、武器を携帯しなければならないときには、神の加護のあることを。だが、過去の悪は、警官と軍人が関わっていて、ある日、彼らは彼等自身がまともでないことをやっていることに気付くのだ。Noといえるようにしておかなければならない。
8. Stand out.
誰かがやらなければならない。後についていくのは易しい。異なること、違うことをやったり、言ったりするのは、居心地悪いことだ。しかしその居心地の悪さなしには自由はあり得ない。Rosa Parks を思い出してほしい。あなたが手本を示せば、旧態依然たるものの呪文は解け、人々はついてくる。
9. Be kind to our language.
自分の言葉を大切にせよ。ほかの皆が言うことを言わない。もしもあなたがみんなが言うことと同様なことを考えたとして、それを伝えるには、あなたなりの言葉としゃべりかたを考えること。インターネットから離れるように努力すること。そして本を読むこと。
10. Believe in truth.
真実を信ぜよ。事実を捨てることは自由を捨てることだ。もし真実がないとすれば、だれも権力を批判することができない、なぜならそうする基盤がないからだ。もし真実がなければ、すべては壮大な見世物となる。真実がなければ、最も重い財布をもつ金持ちが、ひとびとの目をくらませることができる。ポストトゥルース(post truth)とは、ファシズム前夜のことだ。
11. Investigate.
自分自身で調べよ。自分自身で理解せよ。長い記事を読むことに時間を使うこと。印刷されたメディアを購読することによって、「調査する」ジャーナリズムを援助しなければならない。
12. Make eye contact and small talk.
目を見て、アイコンタクトして、身近な話をせよ。それは単に謙虚であることというだけではない。それは市民であり、責任ある社会の一員であることを示す。それはあなたが、あなたのまわりのひとびとと触れ合い続け、社会の障壁を崩し、あなたが誰を信頼すべきか、信頼すべきでないかがわかる。もしわれわれが弾劾の文化の中に入ったときには、あなたはあなたの日々の暮らしのなかでの、笑顔、握手、あいさつの言葉、ありふれたことが、違いをつくる。親しいはずの人たちが、目をそらし、わざわざ道を避けるようなら、恐怖は増すのである。
13. Practice corporeal politics.
現実世界で身体を動かして、政治を実践せよ。権力は、あなたがソファーに座って軟弱になり、あなたの情緒が映像を見て消耗されることを望んでいる。外に出よ。あなた自身を未知の人とともに、未知の場に置け。新しい友を作り、彼らとともに行進せよ。
14. Establish a private life.
私的な個人生活を確立すること。険悪な支配者は、あなたについて知っていることを使って、あなたをいじめる。常に、あなたのコンピューターのマルウェアでかき回す。Eメールは空に書いているようなものだ。インターネットの代替となる使い方を考えよ、ないしは単純に、インターネットの使用を減らすこと、使わないようにすること。人と自分自身で現実にかかわること。どのような訴訟問題なども解決しておくこと。独裁者はあなたがひっかかっているカギフックを探し出す。そんなカギフックに引っかかっていないようにすること。
15. Contribute to good causes.
それが政治的であってもなくても、あなた自身の人生の考えに合う、良き公的な社会基本に関わる組織、大義、common causeに貢献せよ。
ひとつでも、ふたつでも、慈善活動を選びだして、自動振り込みに設定する。そうすれば、あなたは市民社会を支え、他の人々が良きことをするのを助けるという自由な行動をすることになる。
16. Learn from peers in other countries.
他国の仲間に学べ。外国の友人を持ち続けよう。新しい友人を外国に作ろう。アメリカの現在の困難は、おおきな傾向といえる。そして、どの国もその国だけで解決できない。あなたとあなたの家族はパスポートを持たねばならない。
17. Listen for the dangerous words.
危険な言葉に耳をそばだてよ。過激主義とかテロリズムといった言葉の使われ方に、警戒すること。緊急事態とか例外的事態であるとかという致命的な観念にも注意せよ。本来愛国的な語彙の不誠実な使われ方に憤ること。
18. Be calm when the unthinkable arrives.
予期せぬことが起こったときに冷静であれ。近代的な専制独裁とはテロ操作をすることである。テロリストの攻撃が来たとき、権威主義的支配者は権力の統合のために、そうした事態につけこむ。チェックとバランスの終わり、反対党の解体、表現の自由や公平な裁判の権利の差し止め等々が必要であるとされるような、突然の大惨事であるというのは、最も古いヒットラー主義者による本がたくらむことである。これに陥ってはならない。
19. Be a patriot.
パトリオット(愛国者)であれ。次の世代の人たちのためにアメリカが意味する良きモデルを据えること。彼らにそれが必要なのだから。徴兵から逃れることとか、戦争の勇士やその家族をあざけるといったことは決して愛国的ではない。会社の中で、現役服務中の人間を差別することは愛国的とは言えない。愛国主義とは自分の国への奉仕を意味する。大統領はナショナリストである。愛国者とは異なる。ナショナリストは我々が最悪であることを奨励し、そして我々はベストであると言う。オーウェルが書いたように、権力は、終わりなき、勝利、敗北、復讐だとはいえ、オーウェルが書いたように、ナショナリストは、現実社会で何が起きているかには関心がないものである。ナショナリズムというものは相対主義的である、、、。小説家Danilo Kis が言うには、ナショナリズムは美的にも、倫理的にも、普遍的価値観といえるものはまったくない。それに対して、愛国者というものは国がその理念を尽くし、はたすことを望む。ナショナリストは、「そんなことはここでは起きるはずがない」と言うだろうが、愛国者は、「ここではそれが起きるかもしれない。」「だが我々はそれを食い止めるだろう」と言う。
20. Be as courageous as you can.
できる限り勇敢であれ。もし、我々のうち、誰も、自由のために死ぬ覚悟を持たないとすれば、我々皆が、専制のもとで死ぬことになるだろう。
法の上に民主的共和国を作り、チェックとバランスのシステムを打ち立てることで、アメリカ建国の父たちは、古代の哲学者たちが独裁と呼んだ悪を避けようとした。一人の人間なり、グループによって、または統治者の利害によってつくられた法律によって、権利の侵害が起こることを憂慮した。米国の継続的な政治議論は、アメリカの社会の中での圧制・独裁の問題を常に危惧してきた、奴隷問題においても、女性問題においても、である。
我々の政治的秩序が危機にさらされていると見るときの、これが基本的なアメリカの伝統的な歴史の見方である。アメリカの実験が圧制・独裁によって脅かされることを危ぶむならば建国の父たちの例に従い、他のデモクラシーの歴史をじっくりと考えることができるだろう、良きニュースは古代ギリシャやローマよりもより近年の適切な事例を引き出せることにある。悪いニュースは、近代デモクラシーの歴史はまた衰退と崩壊の歴史である。
アメリカの植民地が英国の君主、それは建国の父たちにとっての圧制・独裁であったが、そこからの独立を宣言したときから、ヨーロッパの歴史は3つの民主的な瞬時・機会を持った。1918年の第一次世界大戦のあと、1945年の第2次世界大戦のあと、そして1989年の共産主義の終焉のあと、である。これらの事象に関連して作られた多くの民主体制は失敗した。いくつかの点では、我々自身と似通った状況においてである。
歴史は通暁され、慣らされ、そして警告する。19世紀の後半、20世紀の後半と同様に、グローバルな貿易の拡大は進歩への期待を生んだ。20世紀の初頭、21世紀の初頭と同様に、これらの望みは、指導者とまたは一党は、人々の意思を直接に表していると主張する新しい大衆政治(mass politics)のビジョンによって、挑まれた。欧州のデモクラシーは1920年代と30年代に右派勢力の権威主義とファシズムの中で崩壊した。1922年に出来上がった共産ソ連は1940年代、ヨーロッパにそのモデルを拡大した。20世紀のヨーロッパの歴史では、社会は分裂し、デモクラシーは崩壊し、倫理は崩れ、普通の人々が、彼らの腕に銃をもって、死の穴の上に立っている自身を見出した。これは今日、なぜだったのかをよく理解せしめる。
我々は、われらがデモクラシーの遺産は、このような脅威から自動的に我々を守るものと考えがちである。それは誤った反応である。事実、建国の父たちによってセットされた先例は、我々が独裁の深い根源を理解するために歴史を検証し、それに対する適切な答えを考察することを求めている。アメリカ人は今日、20世紀に、デモクラシーがファシズム、ナチズム、またはコミュニズムを生み出したのを見たヨーロッパ人より賢いとは言えない。
我々の有利さは彼らの経験から学べるということだろう。今が、その時だ。この本は、20世紀から学べる20の教訓を、今日の状況にあてて、示している。
政治においては、だまされた、裏切られたというのは言い訳にならない。Leszek Kolakowski
参考文献
Timothy Snyder, On Tyranny, Twenty Lessons From the Twentieth Century. (New York, Tim Duggan Books, 2017)
Timothy Snyder, The Road To Unfreedom: Russia, Europe, America. ( New York, Tim Duggan Books. 2018)
Steven Levitsky & Daniel Ziblatt, How Democracies Die. ( New York, Crown, 2018)
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更新日: 2019/02/07 -09:44 AM