MONGOLIA Project
Community Studies & Plannning Database
Community Leadership Program for Women
NPOs, Think Tanks & Democratic Institutions in Civil Societies
post_disaster_community_building_in_civil_society
Think_Tank_Society_takarazuka
UCRCA_archives
UCRCA Report Archives

復興の過程:ある新議員の議会報告第3回

議員活動報告 気仙沼市議会議員 熊谷雅裕

議員活動報告 気仙沼市議会議員  熊谷雅裕 

6月定例議会が6月10日から始まり、6月27日に閉会しました。
議案は追加をふくめ30件、専決処分等の報告が15件、請願1件が審議され、その中の30号議案平 成28年度補正予算に、私は反対の立場で討論しましたが他に反対の方はおらず可決されました白
その他の議案に反対はなくすべて原案通り可決されました。一般質問は通告は私を含め11人で
したが、議長と私を除く21人中15人が退席し、私は質問できず、質問したのは10人でした。

辞職勧告と一般質問について

 

平成26年9月定例議会で辞職勧告が出されました白 その後お会いした多くの方々に、お叱りと共に『絶対に辞めるな、辞食せずに頑張れ」と激励されました。
その叱咤激励の言葉で、辞職せず議員を続けることにいたしました。感謝しております。辞職勧告に対し ては重く受け止め、議員としての職務をまっとうするための訓戒として、より身を引き締め、気仙沼市の為
に、巨大防湖堤反対のスローガンに賛同して下さった市民の方々の為に、さらに架橋後の大島の温にも、 選挙で選ばれた議員として、4年聞の任期を務めよげようと思い、現在に至っています。


一般質問についてですが、ご春知のように昨年12月定例議会でも、21人中18人が退席しました。私は すぐに質問を取り下げました。その前の9月定例議会でも通告はしたのですが、退席多数の見込みで議会
に混乱を招くとの話があり、取りやめた経緯があります。今回もすぐに取り下げました。

私は議会を混乱させようとは思っていません。ただ質問したいだけです。


私は市会議員です。市民の声を、考えを市長に届ける義務があります。市民の要望を市政に届けるの が議員としての大事な職務です。市民の方々から税金をいただき、その税金の中から議員報酬を得てい
ます。

一般質問をしないことは議員として大事な職務の一つを放棄する行為です。

確かに議員としての職務は一般質問だけではありません。しかし、一般質問は大事な職務のひとつで、義務であり権利です。 そのように思い考えて、一度は止めようとした一般質問を再度通告しました。


一般質問は質問事項を市当局に事前に通告します。通告された市当局は質問内容を議員に確認し、 答弁書を作ります。その答弁書を市長が読み上げ、答弁とします。その答弁に議員が再質問し、担当職員
が答えます。しかし市長にしか答えられない質問もあり、その時は市長が答弁します。

私が一般質問にこだわるのは、市長答弁が聞きたいからです。


市の職員は市長の方針に従い一所懸命業務に努めます。しかし市長の方針が間違っていたらどうする のか。いま市長が進めている方針に疑問があるから、私は市長の方針について質問したいのです。

『海と生きる』をスローガンにしていながら、「海を殺す」巨大防潮堤建設に遭進している現状に疑問があり、質問したいのです。

 

議会は言論の府と言われます。つたない質問でも議会で発言するのが議員としての責務です。議員として在属する限りは、市民の声を代弁し、市民の要望を市政に訴え、責務を果たす所存です。

 

平成28年度補正予算への反対討論

6月定例議会に提出された30号議案平成28年度補正予算に予算科目「被災市街地復興推進事業費」、 事業名「魅力創造まちづくり事業費」、復興計画重点事業分類「地域コミュニティーの充実と市民等との協
働の推進』という事業計画が予算案として出されました。


事業目的 「1970年代から住民参加のまちづくりを進め、『全米で最も住みたいまち』に選ばれた米国オレゴン州ポートランド市などの先進事例から、まちづくりに対する幅広い発想力を身につけるとともに、実践
に向けたプロセスを学び、『日本で一番住みたいまち』を標榜する本市のまちづくりの参考とする。」


調査内容「自然と共生する都市政策を推進し、持続可能なまちづくりをプロデユースしてきたポートラン ド市開発局(日本人勤務)、コンパクトシティ計画を牽引し、モール建設に当たり歴史的建造物の改修等を 主導した ZGF 建設設計事務所(日本人勤務)、ストリートカー(路面電車)やライトレール(軽量軌道交通機
関)などの公共交通機関の運営状況、市民参加型都市づくり、企業誘致経済活動、地元第一主義(ローカ ルファースト)による地域振興、ウォーターフロント地区にあるファーマーズマーケットなどの産直市場など」


参加者「市内でまちづくりに参加している青壮年または観光関連事業等に従事している青壮年22人以 内とし、各まちづくり協議会、観光関連団体、商工会議所等からの推薦により決定する。

 

この計画Iこ995万5干円の予算が計上されたのですが、私はこの議案に反対しました。

反対した理由を述べます。

①事業目的の『日本で一番住みたいまち』を標榜する本市の参考にする』とあるが、参考にならない。

ポートランド市は米国内陸の60万都市です。歴史、文化、人種構成、都市の規模がまったく違います。
『全米で一番住みたいまち』がどうして当市の参考になるのか、理解に苦しみます。

ここは日本です。

 

②調査内容で「自然と共生する都市政策』とありますが、気仙沼市は『自然を破壊』する政策です。

巨大防潮堤建設で海を、沿停漁業を破壊している現状は「持続可能なまちづくり」に逆行しています。

「コンパクトシティ』を気仙沼市は目指していません。

小泉の防災集団移転をはじめ、市内各地の高台 に住宅を点々と造成しています。交通難民、買い物難民を生み出してなにが「コンパクトシティ」なのか。

「ストリートカーやライトレールなどの公共交通機関の運営状況』にいたっては笑止千万です。

気仙沼線廃止の状況で、気仙沼市が独自で「路面電車や軽量軌道交通機関』がつくれますか。

『ウォーターフロント地区』とあるが、気仙沼市の沿岸部は巨大防潮堤建設で消滅の一途です。

海や川の水辺がコンクリートで固められ、子供たちが遊べない水辺をウォーターフロントと言えますか。 調査肉容と気仙沼市の現状はかけ離れており、方向性も遣い、実現不可能な参考事例です。

③参加者は市の職員3名を入れて25入、ぎっと一人40万円で合計約1000万円の予算計上です。

過去の視察は水産業観光業に関連し、何か将来の気仙沼市に寄与する可能性がありましたが、今回のポ
ートランド市の視察はその可能性がありません。帰路シアトル市で視察する予定も組まれていますが、

ネットで調べ、グーグルマップを見て、先方にいる日本人スタッフに問い合わせれば済むことです。

 

以上の理由で反対討論をいたしましたが、私以外の方々は賛成で可決されました。 私には『優遇された一部市民の為の観先旅行』としか思えません。

 

一般質問で聞きたかったこと、言いたかったこと

今回もあえて一般質問に立ったのは、前回のチラシにも書きましたが、昨年9月議会の後に、質問したか った内容を文書にして市長へ質問状を出したことがあります。返答は

『過去に議員が市長に質問状を出 した前例はなく、市長も文書で答えた前例がないので答えられない。市長への質問と答弁は議会の中で」

とのことでした。ですから一般質問で市長の答えを、考えを聞きたかったのです。6月20 日の一般質問で 通告した表題項目は「防潮堤について」「水産と観光について」「大島架橋について」の3点でした。

巨大防調理建設は本当に住民の合意を得ていたのか

現在建設の進む巨大防潮堤ですが、その姿を見て驚き、多くの市民から疑問の声が聞こえます。

先日、神山川の河川堤防計画において、4700名を超える計画見直しの署名が集まりました。ここも住民の合意を得たとされていました。神山川の河川堤防工事は平成26年9月の県議会で承認されています。住民との合意はそれ以前ということになります。しかしこれだけの署名が集まるということは、説明会に参加 できず反対する機会がなかった多くの市民がいたからです。地区住民説明会とはなんだったのでしょうか。

県も市も市民生活に密着した重要な問題を、住民の意見や思いを聴かず決定し、押し付けています。
神山川の桜並木はその地区だけのものではありません。量観はすべての市民のものです。

 

フラップゲートは肉湾と港町だけなのか

市長は港町地区の防潮堤計画において、2mのフラップゲート採用を県に求めています。

「1mのフラップゲート援用では湛が見えない。2mの採用は譲れない」「窓は考えていない」

と発言しており、理由として「海が見え船を見送る出港岸壁は大きな観光資源」「防犯安全対策のため」等々挙げられています。私は市長に質問したい。
「船の見送りは出港岸壁だけではありません。子供のころ大島から大漁旗をなびかせ、出漁して行〈船 を見送りました。今でも鹿折、唐桑、松岩、階上などしないの多くの人たちが大漁と安全を祈願して見送っ ているはずです。ところが巨大防潮堤が出来れば船が見えず、それぞれの浜から見送りが出来ません。

すべての浜から出船入船が見えるからこそ『海と生きる気仙沼』ではないのか。」


「観光だけではなく、停泊する漁船の防犯安全対策としても、2mのフラップゲート採用を求めているが、 他の漁港についても防犯安全対策を考えているのか。海が見えないということは、人がおぼれていても判 らない。海での事故が発生し救助を求めたとき、巨大防潮堤があるため、海からも陸からも見えず、救助 が手遅れになったらどうするのか。

観光と防犯安全対策は内湾と港町だけなのか。」

 

「内湾と港町だけが気仙沼ではない。防潮堤すべてに、フラップゲート採用を県に求めるべきです」


市長は以前、商港の直立防潮堤について

「後世に残るひどいものです」「市長でなければ賛成しなかった」

と発言していました。ところが、私の一般質問に対して

『海と生きるということに、防潮堤Iま妨げにならない』
『防湖堤があっても海と生きられる人は山Iまどいる」「それぞれの感じ方で、海と生きるというキャッチフレーズと防潮堤をリンクさせるのは短絡的だ』

と答えていました。私には市長のように想像力がなく、巨大な コンクリートの壁を見て「海と生きている」と感じることは出来ません。生命財産をコンクリー卜の壁で守ろう とするほうが、よほど短絡的です。『後世に残るひどいもの』を造って、気仙沼市に未来はあるのですか』

そして現在進行中の巨大防湖堤建置を、市民の方々は本当に望んでいるのですか。

 

 

巨大防潮堤工事は沿岸漁業に悪影響を及ぼしていないか

先日、大島田尻地区(大島西岸、気仙沼湾内)の漁師さんから聞いた話です。

「ホタテがほとんど死滅している。22.000個の稚貝を仕込んだが、1.500個しか生きていない。」

「生きているのも変形していて売れないヤツだ。来年は収入ゼロだ」「成貝6トンの出荷を見込んでいたが、 半分が死んで身のない殻だけだ。死活問題だ」「外洋に面した長崎地区はそんなことないぞ」等々。

外洋に面した長崎地区Iまホタテに被害がなく、湾内の田尻地区に被害が出ている。原因はなにか。

気仙沼市全体の沿岸漁業生産高は平成21年に14,118トン、平成26年は7,705トン。半減しています。
唐桑地区は3676トンに対し3136トン、本吉地区は2686トンに対し2090トンの生産高でしたが、気仙沼地
区が7755トンに対し2478トン、3分の1以下に激減しています。原因はいろいろと考えられますが、

湾内と外洋に面した地区の漁業生産高の減少差は歴然としています。

 

巨大防潮堤工事により沿岸部が破壊され、川Iまコンクリート護岸でおおわれ、その工事により水質が汚濁 し、自然の浄化装置が消滅し、害毒のある化学物質が海に涜れ込むのが、大きな要因ではないのか。

 

どうして気仙沼市は温水の水質検査を宣期的に行わないのか

この数年、カキ、ホタテ、ホヤなどに貝毒の発生が続いています。サンプルを検査する訳ですが、

その前に防潮堤工事現場や河口周辺を重点的に水質検査すべきではないのか。

もしそこで貝毒発生の原因があるなら、工事を差し止め、対策を講じるべきです。放射能汚染に神経を使 うように

海の水質汚染にも同じように神経を使うのが『海と生きる気仙沼』ではないのか。

大島のアワビの水揚げは震災前の平成21年22年の合計が15,248kg、震災後の平成26年27年の合
計が9,602kgと6割にしかなりません。勿論、震災の影響はあるでしょう。ウニが増えたのも原因でしょう。
しかし、それだけですか。湾内で採れなくなりました。「防潮堤工事は影響していない」と言えますか。

気仙沼市では放射能の水質検査を定期的に行っています。ところが海水の検査をしていないのです。

 

気仙沼市は「スローフードスローシティ』を本当に目指しているのか。気仙沼市の沿岸海業従事者が激減しています。

震災前の平成21年と震災後の平成26年を比較すると、
ワカメ養殖が363経営から291経営、カキ養殖が183経営から84経営、ホタテ養殖が212経営から120経営に減っています。特にカキ養殖とホタテ養殖では激減しており、震災前と震災後の大島でも、カキ養殖 業者が27経営から11経営』ユホタテ養殖業者が98経営から60経営に激減しています。

前回も書きましたが、

スローフード運動とは伝統的な食文化や食材を見直し、持続可能な地元の食材 を生産し、小規模事業者を支える運動

だと解釈しているのですが、いま気仙沼市が行なっていることはそ れに逆行しています。自然の海、山、川の連携で気仙沼の食材があり、それを生かした料理があってこそ のスローフードであり、それを提供するからスローシティだと思います。

しかし海や川をコンクリートで固めて自然を破壇しては、地元の食材が手に入りません。
食を育んできた豊かな自然、伝銃的な食文化、混と生きてきた気仙沼の文化がなくなります。


『海と生きる』から始まり『人と自然が輝く食彩豊かなまち』『人と自然が共生するまちづくり』『スローフードにスローシティ』『日本で一番住みたいまち』等々、素晴らしいキャッチフレーズが並びます。

 

気仙沼市はこれらの素晴らしい標語に向けて、本当に進んでいるのでしょうか。

 

編集者: .(このメールアドレスを表示するにはJavascriptを有効にしてください)
更新日: 2016/07/25 -12:50 PM