Housing and Amenity Planning for Elderly: Assessing Policy by Dr. Sachiko Wakasugi
若杉幸子 高齢社会における住環境基盤整備:実態と政策の検証
高齢社会のひとつの問題は、加齢または他の理由において身体的障害を持ち、自由に自立的な行動が出来ない高齢者が増大することである。
高齢障害者は車いすから人的介助まで、暮らし、動くための、手だてが必要となり、バリアフリーとユニバーサルデザインを目指す、社会的物的環境の整備がなされなければならない。
当研究は高齢者の自立を確保するための計画概念と計画手法の指針を具体的に提起する。
当研究者は中途障害で半身不随となり、車いす生活となった高齢者である。
その自身の経験をもとに、高齢者を取り巻く住宅と都市環境の実態を綿密に観察調査し、その建築計画上の問題点と、さらに介護法から始めて、高齢者の移動のための政策・施策との関係と問題点を明らかにする。
高齢者、身障者の行動能力は個々人によって異なるが、できる限り既存住宅で自律的な生活を続けるための住宅整備のデザイン的配慮を検討する。
高齢者に出来る限りの移動の自由を確保するために公共交通機関の果たす役割は大きい。
東京近郊のJRを事例にそこへのアクセスと構内の問題:解除、表示、斜路等の問題点を明らかにする。
また公共施設の設備のありかたの事例として東京大学病院を取り上げる。
それらをもとに、移動支援のための公的制度と、介護保険制度の支援基準、基準値のあり方を検討する。
高齢者身障者にとって、バリア・フリーはリハビリテーションの夢と希望となる。
バリアフリー、ユニバーサル・デザインは高齢社会のビジョン、目標となるものである。
その実現のためには高齢者、身障者が計画策定と計画評価に参加すること、そして「必要な支援が必要な障害者に届かない事業制度をつくらない」「利用し難い事業制度や法を創らない」ことである。
ここにも公平かつ公正な政策形成システムの構築、独立的シンクタンクの必要性が明らかである。
若杉幸子
地域生活研究者、工学博士。
1977年以降、コミュニティ建設計画への住民参加、コーポラティブ住宅建設、マンション建設反対運動、集合住宅の建て替えにおける居住者運動等を支援。「震災・空襲を生き抜いた女性の記録―職人の家に生まれて―」(自主出版ネットワーク、2002年)、「住み手による住環境計画―その特性と地域分権化への期待」(相模書房、2005年)ほか、専門は、住民主体の住環境計画。最近は、高齢社会、高齢身障者のための居住環境の研究と提言。
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更新日: 2014/01/21 -08:59 PM