老いの日の歌2 上野真城子
我にひとつ解せぬことあり
パンデミックということ
疫病ということ
老いるとは
またいつの日かを
望むことなき
スカーフを
巻きてうれしき
モネの睡蓮
心づかい優しき
ウェイトレスのいて
うみべのカフェの
昼下がりどき
このひとはいつか見た人
こえをかけんとおもいいれば、
幾十年の昔のひとなり
若き人、おろかしくも
つややかにある
大切にしてその日は戻らず
何ゆえか哀しさのある
きょうもまた
死にゆく道と思えば
金色のみもざの花は風に舞う
みちを埋めるはるの店先
沈丁花の香り流れておどろきぬ
まだそのときとおもわざりしに
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更新日: 2021/04/05 -10:13 AM