復興五年 熊谷志緒
夕映えをいよよ深める唐辛子
久に会ふ友のほほえみ小鳥来る
新米を送りて孫の声を聞く
赤い羽根胸に首相の所信かな
曼珠沙華親友(とも)逝く西方浄土みち
笑み栗を身上ぐる空の真青さよ
萩刈るも蕾ある株そと括る
蒲公英の花首伸ばす風軽し
後の人に先を越させる花のみち
山笑ふ仮設も笑みて待つ転居
母の脊ナしぐさも夢に草の餅
春深し濃茶の香る佛の間
粒あんこ甘くたっぷり蓬餅
春の星うるめり吾も涙せり
蒼天に映ゆる島山冬もみぢ
山茶花や架橋間近と盛り咲く
黄落の崎に海鳥乱舞せり
ウルトラムーン照る鼎浦全国に
卒寿吾スーパームーンに出逢ふ幸
公営の住居の狭庭花八手
被災死者の供養碑濡らす冬の雨
(二〇一六年)
本名熊谷すん子さん、昭和二年生まれ、 気仙沼大島の商家に嫁いで七十年、大津波で三代が 心血を注いで築いた資産すべてを失った。以後五年 仮設住宅で暮らす。俳人、民話語り部。
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更新日: 2016/12/21 -10:20 AM