逗子だより 上野真城子
いまここでこう生きる
これで良しと思えることが
我へのごほうび
今日ひと日
我と知り生きる
ありがたきこと
酷暑の中
彼の人逝きぬ
遠き雷鳴
翻訳の言葉をつむぐ一瞬に
思いがけなき異国の光景
七十五歳の夏に
灼熱の広島を思う
今の豊かさを申し訳なく。
口開けて親待つ八月
燕の子ら
コロナ前自由はありしか
コロナ後に何が残るや2020年、
不要不急の身にあれば
明日のおしゃれの煩いもなし
人も来ず人も訪ねず外に出ず
化粧の引き出し開けることなく。
夏の思い出
浜木綿は父の愛した夕暮れの庭
おさな子のたもとを汚す
月見草
おしろい花、
夕暮れの坂道に流れ来るなり
赤黄白ままごとの
宴を飾りしおしろいの花。
モンゴルの風
草原にハーブの香り流れ来て
雲一片もなきモンゴルの夏
若き日に
子等乗せて走りし
海辺の道の夾竹桃
子等連れて
リホバスへの道
夏さかりなり
庭の樹々に
蛍は満ちてベセスダの夏
この夏が最後の夏と言われても
悔いることなし
空、海、雲に。
秋を待つ
沸き立つ雲に紺青の空
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更新日: 2020/09/14 -10:42 AM