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Rules of Policy Analysis and Evaluation Studies in Parliamentary Budget Office.

Roles of Policy Analysis and Evaluation Studies in Parliamentary Budget Office by Ueno, Hiroshi Ph.D.
予算審議を、より客観的・科学的・合理的・厳密(以後、“客観的”という言葉でこれらを代表させる)に行うことの必要性は、提言案の最初に書かれている。
国会(衆院・参院)において、これらの必要性を満たした予算審議が行われるための支援組織として、国会予算分析局が必要となる。この小論は、この国会予算局提言と政策評価学との関係を理論的に論じることを意図している。

小論の目的

筆者は「日本評価学会予算審議改革提言(案)」(以後“提言案”)に、その作成委員会のメンバーとして関わった。提言案は、日本の国会における予算審議をより客観的・科学的・合理的・厳密に行うことへの支援組織として、国会所属(Parliamentary)の予算分析局(Budget Analysis Office)の設置を提言している。予算審議を、より客観的・科学的・合理的・厳密(以後、“客観的”という言葉でこれらを代表させる)に行うことの必要性は、提言案の最初に書かれている。国会(衆院・参院)において、これらの必要性を満たした予算審議が行われるための支援組織として、国会予算分析局が必要となる。この小論は、この国会予算局提言と政策評価学との関係を理論的に論じることを意図している。以下、内容に入る。

関係第1:予算審議とは、その中心は政策審議である

政策は典型的には、予算によって代表される。予算審議とは、政策審議と全く同じとは言えないが、ほとんど同じ意味を有している。国会予算委員会で議論される内容も、政策内容である  。 従って、予算審議とは政策審議とほとんど同義と考えてよい。これには、ほとんどの専門家が賛成し異論はないはずである。

審議とは、①提案された予算案の全体方針と全体規模に関しての、その適切さの分析、善し悪しの評価、与野党による評価結果の議論、そして政党間の取引・修正による合意、または否決;そして②この全体の善し悪しを評価する重要な要素として、予算案の中の一つ一つの政策(予算項目)についての、分析、評価、討議、修正合意または否決、の二つを意味する。

関係第2:政策評価学は、個別政策の審議のうちの分析・評価を支援する

政策評価学は上記のうちの②、即ち一つ一つの政策の分析・評価に直接関わる。一つ一つの討議・修正合意については、間接的に関わる  。即ち、予算審議において、予算委員会の委員(国会議員)が、予算審議を“客観的”に行うためには、“客観的”な分析・評価・予測の結果であるデータが不可欠である。現在は、国会においてこれら“客観的”データなしに、憶測で議論・審議がなされている。政策評価学は、この“客観的”データを提供するのに最も適した学問分野である。従って、“客観的”データを提供することにより国会議員を支援する国会予算分析局の組織と職員は、政策評価学に精通していることが最も望まれる。そして政策評価学は、予算審議に対して“客観的”データを作成することを支援するために、必要な種々の理論・方法・概念と、研究の結果積み上げた事実(証拠に基づく事実、エビデンス)を提供する必要があるし、提供することができる。政策評価学は、国会予算分析局に対してこれらの支援を提供することにより、大いに国家の政策形成・執行に役立ち、ひいては日本国と市民の福祉向上に寄与することができる。

関係第3:政策評価学は、政策策定だけではなく、政策全体に貢献する

この第3を傍証するために、Pancer=Westhues(1989)の図表1を以下に引用する(次頁)。図表1でわかるように、彼らは、政策の生成から終了までの全ライフサイクルの全ての政策ステージにおいて、政策評価が必要であると主張している  。図表1に従えば、国会予算委員会と国会そのものはⓐ~ⓔの政策形成ステージを行い、国会予算分析局は当然これらⓐ~ⓔへ、“客観的”分析とそのデータを提供する役目を担う。政策評価学は国会予算局がこれら分析・データを提供するために、図表1の右端の事前評価、具体的には右から2番目の列の価値分析・ニーズ分析・問題分析・目標分析・ロジックアナリシス・実現可能性分析などの理論・方法・概念を提供し、研究結果として積み上げた事実(エビデンス)を提供することができる。これらは、評価学の事前評価による政策策定への貢献である。

以上の事前評価の利用に加えて、国会予算分析局は、ⓕ~ⓗの政策執行・事後ステージにおける、政策評価学の貢献を利用することができる。即ち政策評価学によって事後的に行われる各種の評価活動(立ち上げ評価・プロセス評価・事後評価・成果評価など)の研究結果を、積み上げた事実(事後的なエビデンス)として、政策案(予算案)の“客観的”評価へ利用することができる。これら評価活動の中のプロセス評価は、政策の執行中に継続的に行われる評価である。このように政策評価学は、政策の執行中・事後的に積み上げた事実(エビデンス)を、国会予算分析局の政策の事前評価活動へ提供することができる。即ち、政策評価学は、政策の事前・執行中・事後の政策全体のプロセスへ貢献できる。

関係第4:国会予算分析局の予算分析(政策分析)は外部評価に近く、市民へも貢献する

国会予算分析局は、首相・内閣からの指示に従って予算の分析・評価を行うのではなく、国会内の与党・野党各派に対して偏見なく対応するために、客観的な分析・評価が求められ、それを最大の基準とすることになっている(US-CBO参照)。従って、この活動は、内部評価と言うよりは、外部評価に近い。この客観性により、国会・首相・内閣・行政の外部からの一般的支持を得ることができるし、それを目指すべきである。即ち民間企業・マスメデイア・NGO・アソシエーション・市民などが信頼できる第3者的な外部評価に近い分析・評価を提供できるし、そうすべきである。例えば、米国のCBO(議会予算局)の分析・評価の報告書は、以下のグラフ(FT1011年4月13日号)のように、世界的に信用されている新聞(FTファイナンシャル・タイムス、NYTニューヨークタイムス等)によって客観性のある重要な情報として引用されている。以下のグラフは2050年には、現状のままだと連邦政府の負債が国内総生産(GDP)の90%にも達する(左端のパネル)が、それに対するライアン政策案を採用すると、10%になる(中央のパネル)と予測している。ちなみにライアンは共和党右派である。ザ・エコノミスト(The Economist, April9th, pp.10,33-4)の記事は、このCBOの分析・評価に基づいて、ライアン政策案(予算案)を米国議会は真剣に討議すべきであると主張している。このようにマスメディアだけではなく、市民に対しても信頼できる客観的データを提供することにより、市民の啓蒙・育成に貢献することができる。この客観的データ作成の為に、政策評価学は貢献できる。

同時に下記のグラフは、国会予算分析局による客観的な結果予測・将来予測の作業の重要性を示唆している。即ち、ある政策(予算)が、どのような将来を引き起こすかを極力客観的に示す作業と、透明性を確保するためにその結果を開示することが、国会予算分析局の重要な作業の一つであることを示唆している。

参考文献

  • 上野宏(2004)「政策工学試論2:政策プロセス、政策評価、及び予算策定」
    日本評価学会『日本評価研究』4(1)、3月、pp.66-86。
  • 龍慶昭=佐々木亮(2002)『戦略策定の理論と技法』多賀出版。
  • Financial Times, (2011), April 13.
  • Pancer, S. Mark, and Anne Westhues (1989), “A Developmental Approach to Program Planning and Evaluation,” Evaluation Review, 13(1), pp.56-77, February.

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国会予算分析局と政策評価学[PDF]  日本評価学会 2014年3月11日 発表上野宏

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Updated date: 2014/03/11 -03:49 PM