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コミュニティにおける高齢者等の生活について―日本 ―その2.高齢者等の住宅事情―

平成17年10月1日現在、日本の人口は127,767,994人であり、65歳以上の人口は25,672,005人、高齢化率は20.09%です。 国立社会保障研究所・人口問題研究所が行った日本の将来推計人口(平成18年12月推計)によると、平成25年に日本は高齢化率が25.2%で、おおよそ4人に1人が高齢者ということになります。

1.はじめに

平成17年10月1日現在、日本の人口は127,767,994人であり、65歳以上の人口は25,672,005人、高齢化率は20.09%です。国立社会保障研究所・人口問題研究所が行った日本の将来推計人口(平成18年12月推計)によると、平成25年に日本は高齢化率が25.2%で、おおよそ4人に1人が高齢者ということになります。

2.高齢者等注1)の住宅事情

ここでは、高齢者等の住宅事情をその1と同様、『住宅・土地統計調査』 (総務省統計局)の調査結果注2)(平成20年)に基づいて詳しく見ることにしましょう。

2.1.高齢者世帯員のいる主世帯の居住状況について(図2-2参照)

1.高齢者世帯員のいる主世帯は主世帯総数の1/3を超える

住宅に住んでいる主世帯総数は49598300世帯です。その内、高齢者世帯員のいる主世帯は18,197,600世帯、約37%あり、主世帯総数の1/3を超えます。

2.高齢者世帯員のいる主世帯の半数は高齢者のみで暮らしている

主世帯総数の内の約8%(4,137,900世帯)が高齢者単身主世帯、約10%(5,111,500世帯)が高齢者世帯員のいる夫婦主世帯です。このように、高齢者世帯員のいる主世帯の約半数の主世帯が単身と夫婦のみの高齢者主世帯です。このことから、日本のコミュニティで高齢者世帯員がいる主世帯の約半数は高齢者のみで暮らしている『高齢者主世帯』であることが判ります。

2.2.高齢者世帯員のいる主世帯の住宅事情について

1.多くは持ち家で暮らしている。その中の高齢者単身主世帯の多くは公営借家と民営借家の木造及び非木造で暮らしている(図2-3参照)

住宅の所有関係別に見ると、高齢者世帯員のいる主世帯は主世帯総数に比べて持ち家に居住する世帯の割合が高い。しかし、高齢者世帯員のいる主世帯の中の高齢者単身主世帯は公営借家と民営借家の木造及び非木造(に居住する世帯の割合が高い。

2.多くは一戸建で暮らしている。その中の高齢者単身主世帯の多くは長屋建と共同住宅で暮らしている(図2-4参照)

住宅の建て方別に見ると、高齢者世帯員のいる主世帯は主世帯総数に比べて一戸建に居住する世帯の割合が高い。しかし、高齢者世帯員のいる主世帯の中の高齢者単身主世帯は長屋建と共同住宅に居住する世帯の割合が高い。

2.3.居住水準について

最低居住面積水準未満の世帯は主世帯総数の6.7%で、3313500世帯あります。 最低居住面積水準未満の世帯は比率ではわずかですが、主世帯総数が5千万世帯近い日本では、その1%でも50万世帯近くになります。 そこで、高齢者等の住宅については最低居住面積水準未満の世帯を見る場合、比率だけを見ずに実数も見ることにしましょう。

1.高齢者主世帯の内の約33万世帯が最低居住面積水準未満の主世帯。その内26万世帯が高齢者単身主世帯である (表2-1,2-2参照)

最低居住面積水準未満の主世帯を世帯別にみると次の通りです。

  • 高齢者単身主世帯で最低居住面積水準未満の世帯は264200世帯で、高齢者単身主世帯の内の6.4%です。
  • 高齢者世帯員のいる夫婦主世帯で最低居住面積水準未満の世帯は63,500世帯で、高齢者世帯員のいる夫婦主世帯の内の1.2%です。
  • このようなことから、高齢者世帯の内の約33万世帯が最低居住面積水準未満の住宅に住んでいること、また、高齢者単身主世帯がその8割を超え圧倒的に多いことが判ります。

2.高齢者単身主世帯の多くは住宅の建て方別には長屋建と共同住宅の最低居住面積水準未満の住宅に、所有関係別には民営借家の木造と非木造の最低居住面積水準未満の住宅に暮らしている (図2-5,6、表2-1,2-2参照)

住宅の建て方別にみると、長屋建の14200世帯、共同住宅宅の236300世帯、合計250500世帯の高齢者単身主世帯が最低居住面積水準未満の住宅に居住しており、住宅の所有関係別にみると、民営借家の木造の117900世帯、民営借家の非木造の112300世帯、合計230200世帯の高齢者単身主世帯が最低居住面積水準未満の住宅に居住しています。

3.日本の住宅政策について

3.1.住宅困窮層として社会的支援を求める最低居住面積水準未満の住宅に居住する高齢者主世帯

1966年の第1期住宅建設五箇年計画で『一世帯一住宅』の目標が公表されて約45年経過しますが、現在約330万世帯が居住する最低居住面積水準未満の住宅は今も『一世帯一住宅』とカウントされています。当時設定した居住水準は『住宅の質』を向上する目的がありましたが、45年近く経過した現在でも多くの最低居住面積水準未満の住宅が存在していて、それが未だに『一世帯一住宅』とカウントされている状況は、『一世帯一住宅』の目標に掲げた住宅の質が未だ向上していないこと、また、多くの人が最低居住面積水準未満の住宅に居住していること、あるいは、『住宅とカウントされても住宅と判断できない建物』に居住しているかも知れないことを示しています。さて、日本には公営住宅という社会的支援を受けた住宅があります。この公営住宅に入居するには入居資格があり、公営住宅法の入居者資格が明記されている第23条には『3 現に住宅に困窮していることが明らかな者であること』とあり、また、第25条の入居者の選考等については、『政令(で定める選考基準に従い』とあり、施行令)の第7条の入居者の選考基準には、『住宅の規模、設備、または、間取りと世帯構成との関係から衛生上、または、風教上不適当な居住状態にある者』注3)という要件があります。高齢者の住宅事情から判ることは、住宅の所有関係別には民営借家の木造に居住する117900世帯、民営借家の非木造に居住する112300世帯、合計230200世帯の高齢者単身主世帯が、また、住宅の建て方別には長屋建に居住する14200世帯、共同住宅に居住する236300世帯、合計250500世帯の高齢者単身主世帯が最低居住面積水準未満の住宅に居住しており、この約23?25万世帯の高齢者主世帯の多くは自力で居住水準の向上を図れない社会的支援が必要な主世帯です。また、公営住宅法の入居要件に照らすと彼らの多くが公営住宅に入居資格のある『住宅困窮主世帯』であるということができます。

3.2.真の住宅困窮層である『ホームレス』の実態調査と社会的支援が必要

住宅・土地統計調査の対象は『住宅及び住宅以外で人が居住する建物並びにこれらに居住している世帯』であるので、これらに居住していない世帯、例えば、建物にさえ居住していない、いわゆる『ホームレス』はこの統計調査でその実態を調査されることはありません。また、ホームレスが国全体でどのくらい存在しているのか、その全体について未だ把握されていません。世界には原因は多種多様ですが、『難民』、『スコッター』、『ホ―ムレス』など、居住する建物がない人や世帯が一定の地域、一定のコミュニティに存在します。今回は日本で行われた主に住宅に居住する世帯の統計調査の結果を報告しましたが、日本では居住に関する国全体のデータはまだまだ不足しています。あらためて述べますが、建物にさえ居住していないこの国民、『ホームレス』は『住宅困窮層』です。そして、この実態が未だ把握されていないことは、国民全体を対象にした住宅政策を実施するためには不十分といえます。このようなことから、住宅困窮層である『ホームレス』を排除せずに実態に即した『住宅困窮』を把握することそのためには、これまであった住宅困窮の概念やタイプ分類等を再構築して、住宅困窮の全容について統計調査を行うこと、また、住宅困窮者総数を対象に社会的支援を行ない、第1期の住宅建設五箇年計画における住宅建設の目標であった『一世帯一住宅』をまず実現させることが日本の住宅政策の課題です。

4.アジアの学生たちに向けて

4.1.アジアにおけるスコッター等の存在とその実態調査の必要性について

アジアにはアフリカや中東地区における内戦で生まれた『難民』は数少ないかも知れませんが、土地や建築に関する国の法律が創設される以前から河川敷や公園等、公共の土地を居住地として専用し、コミュニティを築いてきた『スコッター』は存在します。また、近年の社会的・経済的な状況下で持ち家を手放し、あるいは、借家から追い出されて『ホ―ムレス』になった人々が新たに加わった地域やコミュニティもあるでしょう。今回は日本で行われた主に住宅に居住する主世帯の統計調査の結果を報告しましたが、アジアには住む家がない人々、あるいは、居住に関して多くの問題を抱えている人々がいることを理解するとともに、次の点についても理解することが必要です。

  • これらの人々は私たちの隣にいること
  • それ故、私たちが受けることのできる社会的な支援を等しく受ける権利があること
  • そのためには、私たちと同様、その実態を総合的に把握して政策等に反映させるための統計的調査を受けられるようにすることが必要であること
  • 統計的調査等の結果が公表され、これらに基づいて公正な社会的支援が行われることが必要であること

1987年は第1回の『国際居住年(IYSH)』であり、それは『家のない人々のための国際居住年(International Year of Shelter for the Homeless)』でした。 以下は居住に関する権利や国際居住年に関する国際的な取り決めを抜粋したものです。上記のことを理解するための参考になるでしょう。

○世界人権宣言(国連総会、1948年)Universal Declaration of Human Rights(United Nations General Assembly、1948)
 第25条 1. すべての人は、衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、自己及び家族の健康及び福祉に見合う生活水準を保持する権利並びに失業、疾病、心身障害、配偶者の死亡、老齢その他不可抗力による生活不能の場合は、保障を受ける権利を有する。
1.Everyone has the right to a standard of living adequate for the health and well-being of himself and of his family, including food, clothing, housing and medical care and necessary social services, and the right to security in the event of unemployment, sickness, disability, widowhood, old age or other lack of livelihood in circumstances beyond his control.


○経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(国連総会、1966年)International Covenant on Economic, Social, and Cultural Rights(United Nations General Assembly、1966)
第11条(相当する生活水準についての権利)
 1. この規約の締約国は、相当する食糧、衣類及び住居等、自己及びその家族に見合う生活水準について、また、生活条件の不断の改善についてすべての者にその権利を認める。締約国は、この権利の実現を確保するために適当な措置をとり、このためには、自由な合意に基づく国際協力が極めて重要であることを認める。
Article 1 1. The States Parties to the present Covenant recognize the right of everyone to an adequate standard of living for himself and his family, including adequate food, clothing and housing, and to the continuous improvement of living conditions. The States Parties will take appropriate steps to ensure the realization of this right, recognizing to this effect the essential importance of international co-operation based on free consent


○ハビタット?アジェンダ(1996年、第2回国連人間居住会議)Habitat II - the Second United Nations Conference on Human Settlements 人間居住に関する宣言
前文:第2回国連人間居住会議の目的は、"すべての人に見合う避難所"と"都市化する世界におる持続可能な人間居住開発"という等しく重要な2つのテーマに対応することである。人は、すべての人に見合う避難所と持続可能な人間居住等、持続可能な開発に関心の中心があり、また、彼らは自然と調和して健康で生産的な生活をおくる権利がある。
Chapter I - Preamble 2:The purpose of the second United Nations Conference on Human Settlements (Habitat II) is to address two themes of equal global importance: "Adequate shelter for all" and "Sustainable human settlements development in an urbanizing world". Human beings are at the centre of concerns for sustainable development, including adequate shelter for all and sustainable human settlements, and they are entitled to a healthy and productive life in harmony with nature.


○ハビタット?アジェンダ(1996年、第2回国連人間居住会議)Habitat II - the Second United Nations Conference on Human Settlements 人間居住に関する宣言
前文(部分):誰もが、相当な食糧、衣類、住宅、水、衛生等、自分自身と家族に見合う生活水準と生活環境を継続的に改善する権利を有する。
Chapter I - Preamble 11:Everyone has the right to an adequate standard of living for themselves and their families, including adequate food, clothing, housing, water and sanitation, and to the continuous improvement of living conditions.


○イスタンブール宣言(1996年、第2回国連人間居住会議)Istanbul Declaration on Human Settlements(1996)
 第四 居住地の生活の質を改善するために、われわれは多くの場所で、とりわけ開発途上国で、危機状態に達している衰退現象と闘わなければならない。
To improve the quality of life within human settlements, we must combat the deterioration of conditions that in most cases, particularly in developing countries, have reached crisis proportions
第七 われわれは貧困と差別を除去し、すべての人の人権と基本的自由を擁護・促進し、教育・食物・生涯保健サービス、とりわけすべての人に見合う住宅といった基本的な必要を供給することに、いっそう努めなければならない。
 We shall intensify our efforts to eradicate poverty and discrimination, to promote and protect all human rights and fundamental freedoms for all, and to provide for basic needs, such as education, nutrition and life-span health care services, and, especially, adequate shelter for all.
第八 われわれは諸国際文書が定めた相当な住宅という権利が完全に漸進的に実現するために我々の誓約を再確認するものである。この目標にむかって、われわれは不動産保有の法的保障・差別からの保護・すべての人と家族に見合う手頃な住宅への平等な機会を確実にするために、あらゆる段階で公共・民間・非政府機関の共同による積極的参加を探求しなければならない。
We reaffirm our commitment to the full and progressive realization of the right to adequate housing as provided for in international instruments. To that end, we shall seek the active participation of our public, private and nongovernmental partners at all levels to ensure legal security of tenure, protection from discrimination and equal access to affordable, adequate housing for all persons and their families.


  • 注1)高齢者や身体障害者などを示す 。
  • 注2)住宅の図は平成20年『住宅・土地統計調査』(総務省統計局)、調査結果の統計表より作成:
  • 注3)資料:公営住宅法施行令 入居者の選考基準 第7条
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更新日: 2011/05/30 -03:29 AM