高齢になると、しっかり足を上げているつもりでも足があがっていなかったために転倒して怪我をすることがあり、また、「転倒は住宅の外ばかりでなく、住宅の中でも起こる。」と言われます。そこで、室内でつまずかないようにするために、高齢者等注1)がいる世帯では室内に凹凸や段差を作らないよう床を平らにすることがあります。これが床の『バリアフリー』です。また、足腰が弱い高齢者等のために必要なところに『手すり』をつけ、バスタブを低くして『またぎやすいバスタブ』などに改造することもあります。住宅・土地統計調査では、このような高齢者等のための設備について各世帯に調査しています。また、共同住宅については、エレベーターのある共同住宅と高齢者対応型共同住宅について調査し、その結果を特別に掲載しています。
高齢になると、しっかり足を上げているつもりでも足があがっていなかったために転倒して怪我をすることがあり、また、「転倒は住宅の外ばかりでなく、住宅の中でも起こる。」と言われます。そこで、室内でつまずかないようにするために、高齢者等注1)がいる世帯では室内に凹凸や段差を作らないよう床を平らにすることがあります。これが床の『バリアフリー』です。また、足腰が弱い高齢者等のために必要なところに『手すり』をつけ、バスタブを低くして『またぎやすいバスタブ』などに改造することもあります。住宅・土地統計調査では、このような高齢者等のための設備について各世帯に調査しています。また、共同住宅については、エレベーターのある共同住宅と高齢者対応型共同住宅について調査し、その結果を特別に掲載しています。
住宅・土地統計調査が行った高齢者等のための設備は、『手すりがある』、『またぎやすい高さの浴槽』、『廊下などが車いすで通行可能な幅』、『段差のない屋内』、『道路から玄関まで車いすで通行可能』の5項目です。
1.設備の有無は主世帯総数では半数が、高齢者世帯員のいる主世帯では約6割が『ある』
世帯の型別にみるとその結果は図3-1に注2)に示す様に、
2.持ち家は約6.5割、借家は約3.5割、長屋建は約4割、共同住宅は約3.5割が『ある』。建設時期が新しく平成8年以降建設された住宅は設備がある世帯の割合が高い
住宅の所有関係別にみると持ち家は約6割、借家は約3.5割の世帯が設備のある世帯であり、住宅の建て方別にみると、設備のある世帯は長屋建と共同住宅が共に約4割です。また、建設の時期別にみると建設時期が新しい住宅ほど設備のある割合が高くなります。そして、平成8年以降その割合は高まります。
1.高齢者等のための設備は『手すりがある』、『段差のない屋内』の割合は比較的高いが、他の設備の割合は低い
高齢者等のための設備を設けている主世帯の割合を設備別に見ると次の通りであり、『手すりがある』世帯は4割、『段差のない屋内』が約3割ありますが、他の設備は未だほとんど整備されていません。
2.高齢者世帯員のいる主世帯がほとんどの設備において主世帯総数を上回る
世帯別にみると,その結果は図3-2に示す様に次の通りであり、ほとんどの設備で高齢者世帯員のいる主世帯が主世帯総数を上回って整備していることが判ります。
3.借家、長屋建では設備はほとんど整備されていない。共同住宅では設備がほぼ均等に整備されており、それは廊下や敷地に接する道路から玄関まで延びている。建設時期が新しいほど設備がある。
所有関係別にみると、持ち家がすべての設備で整備されている割合が高く、借家はすべての設備で整備されている割合が低い。建て方別にみると、一戸建ては『手すりがある』と『またぎやすい浴槽』を設けている割合は高いが、それ以外ではほとんどの設備でその割合は低い。長屋建で高齢者のための設備は、『手すりがある』ひとつであり、他の設備の割合は低い。共同住宅は全ての設備で1.5?2割であるが、全ての設備が均等に整備されている。特に、『段差のない屋内』に次いで、『廊下などが車いすで通行可能な幅』、『道路から玄関まで車いすで通行可能』な割合が高く、高齢者等のための設備が住宅の室内から屋外へ延びている。このことから、共同住宅において他の住宅の建て方に比べて高齢者や障害者などが介助なしで住宅の外に出かけられる可能性が高いことが判ります。また、建設の時期別にみると、建設時期が新しいほど全ての設備で『ある』割合が高くなります。特に、1996?2005年の間は急増しています。
4.共同住宅では1996?2005年の間に高齢者等のための設備が室内から屋外まで延びる
建設の時期別建て方別にみると、1996?2005年の間に主世帯総数では『手すりがある』、『段差のない屋内』、『またぎやすい高さの浴槽』、『廊下などが車いすで通行可能な幅)』、『道路から玄関まで車いすで通行可能』の順位に増加しています。これに対して、共同住宅では、『段差のない屋内』、『手すりがある』の次に、『道路から玄関まで車いすで通行可能』、『またぎやすい高さの浴槽』が続き、高齢者等のための設備が共用部分である廊下や住戸の出入り口から道路まで延びています。このことから、これまでは室内に限られていた高齢者等のための設備が1996年以降建設された共同住宅で初めて屋外まで延びたことが判ります。
エレベーターのある共同住宅は住宅総数の約4割です。また、その内持ち家は約8割、借家は約3割です。共同住宅の内、専用住宅について主世帯総数と高齢者のいる主世帯についてエレベーターがある共同住宅に居住する割合をみると、主世帯総数は約4割で高齢者のいる主世帯では約5割があります。これらのことから主世帯総数に比べて高齢者のいる主世帯ではエレベーターがある共同住宅に居住する割合がやや高いことが判ります。住宅の所有関係別にみると、持ち家では主世帯総数の約8割、高齢者のいる主世帯の約7割、借家では主世帯総数の約3割、高齢者のいる主世の約3.5割であり、借家に居住する高齢者のいる主世帯ではエレベーターが整備されている共同住宅居住する割合がやや高いことが判ります。
『敷地に接している道路から共同住宅の各住宅の入口まで,介助なしに車いすで通行できる構造になっている』住宅を『高齢者対応型共同住宅』と名付けて調査しています。調査の結果、高齢者対応型共同住宅があるのは住宅総数の約1.5割です。また、その内持ち家は約4割、借家は1割です。 共同住宅の内、専用住宅について主世帯総数と高齢者のいる主世帯について高齢者対応型共同住宅に居住する割合をみると、主世帯総数は1,5割強、高齢者のいる主世帯では2割強であり、高齢者のいる主世帯は主世帯総数に比べて高齢者対応型共同住宅に居住する割合がやや高いことが判ります。 住宅の所有関係別にみると、持ち家では主世帯総数の約4割、高齢者のいる主世帯の約3割、借家では主世帯総数の約1割、高齢者のいる主世の約2割であり、借家に居住する高齢者のいる主世帯では高齢者対応型共同住宅居住する割合がやや高いことが判ります。
日本では1990年代初めごろ建築や都市計画の分野でバリアフリーの建築物注4)や交通機関のバリアリー化を図るための法律が創られました。更に、平成18年6月には、これまであったバリアフリーに関する複数の法律が1つに統合されて、『高齢者や障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(通称:バリアフリー新法)』注5)が成立し、公共建築物や交通手段等のバリアフリー化が一層促進されました。今回は日本の住宅における高齢者等のための設備についてその状況を報告しましたが、街は高齢者や障害者だけでなく誰もが安全に敷地に接する道路から住宅の玄関まで、また、それよりも遠くに、介助なしに一人でいくことができ、自立して生活できる状態に整備されていることが必要です。『高齢者にやさしい街は誰にでも優しい』ということができるでしょう。そして、コミュニティはそのようなまちづくりを支援することが大切です。
1.その必要性について
高齢者等のための設備やエレベーターや『高齢者対応型共同住宅』の設置状況を見てきた結果、このままでは高齢者や障害者が足腰が弱くなり車いすを利用する状態になった時、介助なしでは一人で住宅の外に出られず、住宅内に取り残され、コミュニティから遠ざかることを余儀なくされることが判りました。それ故、高齢者等が慣れ親しんだコミュニティに継続して安全に自立した生活するためには、『敷地に接している道路から共同住宅の各住宅の入口まで,介助なしに車いすで通行できる』構造になっている住宅に居住できることが今日の高齢社会では必要になります。
2.その時期について
共同住宅におけるバリアフリー化に関して持ち家で木造の住宅の場合は世帯員が高齢化した時、あるいは、家族の誰かが車いすを利用するようになった時など、必要になってから改造すれば間に合います。しかし、非木造の共同住宅の場合、住戸の出入り口から共用の廊下を経て屋外に通じる通路については建設時にそれを設けることが必要です。また、2階以上の階がある場合は、建設時にエレベーターを設けることも必要です。その理由の1つは建て方が共同住宅で非木造の場合、それが持ち家であっても借家であっても、建設後の改造は大改造になるからです。その理由の2つ目は、共同住宅が持ち家の場合、日本では所有者の一定の賛成が得られなければ共有部分の修繕等ができないことが法(『建物の区分所有等に関する法律:昭和37年4月:通称・区分所有法』)で定められていて、入居後に所有者の一定の同意を得ることは極めて難しく、建設後の改修は困難になるからですが、日本以外の国においても所有関係が発生する建物の修復・改善においては、このようなことを想定して、建設時に設置することが適切でしょう。
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更新日: 2011/05/30 -04:36 AM