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復興の過程:ある新議員の議会報告第2回

議員活動報告 気仙沼市議会議員 熊谷雅裕

議員活動報告 気仙沼市議会議員  熊谷雅裕 

 2月12日より定例議会が始まり、3月9日に終了しました。議案は27年度関係議案、27年度補正予算、
28年度関係議案、28年度予算等、73議案と16専決処分が審議されました。
私は21号、22号、47号の3議案に反対の立場で討論しましたが、すべて原案通り可決されました。
 21号議案は「市会議員、教育長、常勤の特別職の期末手当を0.05カ月引き上げ」22号議案は「気仙沼市職員の給与、手当の引き上げ」です。下記が反対討論の文章です

「私は議案第21号及び議案第22号について反対の立場で討論いたします。
東日本大震災から5年になろうとしています。しかし復興は遅々として進まず、道半ばです。
確かに災害公営住宅の入居が始まり、防災集団移転も始まっています。
ですが市民の1割以上、7000人以上の方々がいまだ仮住まいです。
「リモコンを握ったまま寝る父親と同じ部屋なの仮設で4年」中学3年女子生徒の歌です。仮設住宅での生活は2年以内との話でしたが、2年どころか3年4年5年と延長され、ストレスの溜まる狭く劣悪な環境に置かれてきました。その間に多くのお年寄りが亡くなっています。
生活再建が進まず、多くの方々が苦しい生活を強いられています。
産業の再生においても確かに水産加工場がいくつか完成稼働し、魚市場も震災前の水揚げに近づいていますが、市内には造成中の土地建物がまだまだあります。震災からの販路喪失で事業再建ができない事業所も多々あります。働く場所が無くなったこと、そして給与水準の低くいことが人口流出、労働力不足の大きな要因になっています。
そういった復興途上の多くの問題をかかえる気仙沼市の状況の中で、多くの市民が以前の生活を取り戻せていない中で、そして市の財政が苦しい中で、議員及び特別職の期末手当を引き上げ、市職員の給与、手当を引き上げることは市民から許されるものではないと思います。
さらに市長が25%、副市長と教育長は10%給与が減じられているにもかかわらず職員給与が引き上げられるのは筋が通りません。私は仮設住宅がなくなり、市内の造成工事が完了し、市民の多くが生活基盤を確立し、復興を実感できるまで給与の引き上げは止めるべきだと思います。以上反対討論と致します。

 21号議案に反対は私の他には今川議員だけで、22号議案に反対は私だけでした。
気仙沼市の議員年収は平均で約570万、一般職員の年収は平均で約630万です。
気仙沼市の民間企業平均給与は20数万ですが、市職員の平均給与は30数万と10万円もの開きがあります。賞与や手当を加えると年収の差はさらに大きくなり、身分保障、退職金、年金などでも差が出ます。
震災からの復旧復興時に全国からのボランティアが無償の汗をながし、手弁当で奉仕する多くの市民がいました。その中で残業代を払えと市長に訴訟を起こした職員がおりました。「そんな職員はクビにしろ」という市民の声もありましたが、昨年未払いの残業手当3億9千万円が支給されました。
時給にすると2600円の残業代です。
気仙沼市は市民、市長、職員が一体となり復旧復興を目指しているはずですが、民間が苦しむなか解雇も倒産もない公務員だけが昇給する。財政の苦しい市町村の中には、首長と一緒に職員の給与もカットし、財政を立て直しているところもあります。職員給与をカットしろとは言いませんが、
市長が給与を25%カットしているのに、部下である市職員が昇給する。ここに一体感はありません。47号議案は気仙沼市過疎地域自立促進計画の策定です。この反対討論の主旨を述べます。

その計画の基本方針ですが、将来の姿として「人と自然が輝く食彩豊かなまち」をあげ、「市民の財産である豊かな自然を将来に向けて大切にする『人と自然が共生するまちづくり』を進める。」とあります。
ところが現在、巨大防潮堤が次々と出来ています。大島から船で内湾に向かうと、対岸松岩前浜に巨大な白い壁が見えてきます。後ろは山です。進んで右手の鶴ヶ浦、梶ヶ浦も防潮堤の白い壁、さらに進んで左を見ると商港に直立のコンクリート壁が続きます。計画では岩井崎から大川河口まで、そして対岸の大島にも7mを超える巨大な壁ができます。大川、神山川の両岸もコンクリートの壁になります。
まるで巨大な用水路ともいうべき、コンクリートで囲まれた気仙沼湾の情景が将来の姿になります。

そして沖合20mも埋め立て、魚のゆりかごであり、アワビウニ海藻類の育つ磯場をこわします。これが市のめざす「人と自然が共生するまちづくり」なのか。私には「人が自然を拒絶するまちづくり」としか思えません。そして「食彩豊かなまち」とありますが、防潮堤で伏流水を遮断し、磯場を埋め立て、海のゆりかごを破壊する行為は沿岸漁業をダメにすることで、食彩は豊かになりません。アワビもウニもアサリも、ノリもヒジキもマツモも、メバルもタナゴもアイナメも、カニもタコもイカもない、貧しい食卓になります。実際、アサリの掻ける浜はなくなり、以前に比べ痩せたアワビ、身のないウニが多くなり、魚が釣れないと漁師がなげいています。こういった中で過疎地域自立促進特別事業として「漁船漁業担い手育成支援事業」「沿岸漁業振興対策事業」「内水面漁業振興対策事業」の項目をあげていますが、もとになる気仙沼湾の沿岸、内水面が破壊されてしまっては振興対策などできるとは思えません。 震災後、漁業従事者が激減しています。
豊かな海を取り戻すことがなによりも肝要です。お題目だけでは過疎対策にはなりません。

観光業の項目では、「人口減少が進む中、交流人口の増加に繋がる観光業の振興はこれまで以上に重要である」とあります。さらに観光業の振興の戦略として「気仙沼ならではのオンリーワンコンテンツを活用した誘客戦略」とあります。オンリーワンコンテンツとはなにかと聞くと、震災遺構と海の市の食材をあげています。そんなコンテンツは被災した海辺の市町村がみんな持っていて、オンリーワンとは言えません。 
「水産業と観光産業の連携、融合による新たな付加価値創造戦力」がもう一つの戦略ですが、痩せたアワビとコンクリートの壁が水産業と観光業の連携、融合なのか、それで観光客は呼べるのか。

そして地域文化の振興として「本市は食を育んできた自然や伝統的な文化を地域のかけがえのない財産とし、自然と文化を守りながら食を生かした個性的で魅力あるまちづくりを進めるために、気仙沼スローフード都市宣言をしており、これを具体化する事業展開を求められている」とあります。
スローフード運動とは伝統的な食文化や食材を見直し、持続可能な地元の食材を生産し、小規模事業者を支える運動だと解釈しているのですが、いま行われていることはそれに逆行します。
自然の海、山、川の連携で気仙沼の食材があり、それを生かした料理があってこそのスローフードであり、それを提供するからスローシティだと思います。
しかし海や川をコンクリートで固めて自然を破壊しては、地元の食材が手に入りません。
食を育んできた豊かな自然、伝統的な食文化、海と生きてきた気仙沼の文化がなくなります。

このままでは、気仙沼市がめざすとしている将来の姿、「人と自然が輝く、食彩豊かなまち」になるとは到底考えられません。一番大事な気仙沼市の掲げる「自立促進の基本方針」とはまったく違う方向に進んでおり、基本理念と現実が相反する議案にわたしは賛成はできません。
防潮堤建設の名目で行われている自然破壊は「海を殺し気仙沼を衰退させる愚かな行為」です。

市長にしたかった一般質問について

昨年12月議会で一般質問の通告をし、質問しようと試みたのですが、21人中18人が退席し定足数に満たず出来ませんでした。覚悟はしていたのですが、あえて質問に立ったのは市長の答弁を聞きたかったのです。9月議会の後に、質問したかった内容と主張を述べたチラシを三陸新報に折り込み配布しました。その後に市長にチラシの内容を質問状として出しましたが、「過去に議員が市長に質問状を出した前例はなく、市長も文書で答えた前例がないので答えられない。市長への質問と答弁は議会の中で」とのことであえて一般質問の場に立ったのです。一番聞きたかった質問をここに述べます。
市長は議会で巨大防潮堤建設に関し、虚偽の答弁をしたのか、しなかったのか。
市長は26年6月定例会で「防潮堤があれば全部海と陸がつながらないかと、そうではないんだと思います。多くの防潮堤は今回提案しているのは土を盛るというかたちですし、矢板を打つというケースは防潮堤ではないと考えます。くいは面ではありません。そういうことが基本的にあるということをご理解いただければありがたいと思います。」と答えています。
ところが大島磯草工区では7mの防潮堤の下、地盤改良工事で厚さ7m44cm、巾7m75cmのコンクリート壁が131mも地下に築かれます。高井浜では矢板が合計792枚、延べ712mもの間地下に打ち込まれ、外浜では鋼管の杭が82本、鋼管矢板が135本、延べ412mもの間に打ち込まれます。
これは大島だけの例ですが、市内他地区にも同じような工事があります。
市長答弁は工事内容と違っています。知らなかったら県に早急に工事差し止めを申し入れるべきです。
もし工事内容を知っていて、議会で虚偽の発言をしたとしたら大問題です。

このことは前回のチラシにも書いていますが、チラシを新聞に折り込んだことは委員会で問題視されましたが、書かれた内容は問題とはなりませんでした。
 先日、漁市場の起工式があり、新年会が開かれ、佐藤亮輔組合長が挨拶の中で漁獲高の減少を危惧しておりました。サンマの漁獲量は半減し、カツオ一本釣りは10月で終漁です。国内トップ級の漁市場の竣工は喜ばしい限りですが、完成したとき肝心の魚が獲れなければ気仙沼はどうなるのか。
日本の漁業生産量は1984年1282万トンだったのが、2013年480万トンと6割以上減っています。
日本は世界の漁場から締め出され、規制を受け、遠洋も日本周辺の水域も中国韓国台湾の大型漁船に荒らされて、魚獲高が激減しています。三陸沖の漁場は世界三大漁場のひとつで、気仙沼はその恵みを受けてきました。北上山地から栄養豊かな水が流れ込み、プランクトンが大量発生、そこから食物連鎖が始まり、イワシからクジラまで三陸沖に集まります。干潟や磯に藻場が形成され、三陸の浜はどこでも魚、貝、海藻にあふれていました。ところが山林が荒廃し涵養機能が低下、河川にはダム、コンクリート用水路がつくられ海に養分が流れず、干潟、磯場が埋め立てられ海岸はコンクリートの護岸が続き、磯焼け、藻場喪失等で魚の産卵場や生育場所がなくなっています。その状況の中でさらに巨大防潮堤建設が行われています。これは三陸沿岸の漁場を破壊し続けることであり、さらに漁獲高を減らします。
気仙沼市の進む方向は「人と自然が共生するまち」のはずです。「スローフード都市宣言」を行い、国内初の「スローシティ認証」を得て、「人と自然が輝く食彩豊かなまち」を目指すなら、「海と生きる」を掲げて復興しようとしているなら、防潮堤計画を見直し、防潮堤のないまちをオンリーワンコンテンツすべきです。
このままでは、「世界に羽ばたく産業のまち」「日本で一番住みたいまち」には、絶対になりません。

村井宮城県知事の不遜で間違った考え

 昨年の11月24日の河北新報で村井知事にインタビューした記事がありました。
「防潮堤建設など巨大プロジェクトへの予算投入に被災地の反発もある。」との問いに、『勘違いしてほしくないのは、大型公共事業によって復興特需の維持を目指す経済対策などではないということ。必ず来る次の巨大災害から将来の命を守るための先行投資だ。同時代の人たちに評価されないのは残念極まりないが、〈その時〉には必ず分かってもらえると信じている。』 と答えている。
 知事は防潮堤によって命を守ると言っているが、間違っています。津波から命を守るものは自分です。我々は三陸の海に暮らしてきて、過去に幾度も津波に襲われ被災しました。それでも海辺で生活してきたのはなぜか。豊かな自然、海の恵みで生きてこられたからで、海を恨んではいないのです。それを海辺で生活したことのない知事が、海と生きてきた住民の思いを拒絶して、自己の考えを押し付けています。
「将来の命を守る先行投資」と言っているが、50年後、100年後に海辺に人が住んでいるのか。


先行投資をするなら子供たちの医療費、教育費を全額補助した方がよほど良い。気仙沼市で約1600億の予算があるが毎年16億円子供たちに使っても100年持ちます。三陸の人口減少に歯止めをかけるため1兆円使われる防潮堤建設予算をすべて子供たちに振り向けたら、三陸の人口は増加すると思います。

我が国は東日本大震災時に民主党政権で、首相が菅直人という不幸がありました。
福島の原発被害を拡大させ、責任を転嫁し、被災地を見舞うわけではなく、退任後のうのうと四国巡礼に出かけ、まったく恥じずに今も国会議員を続けている。その人が作った中央防災委員会の方針に従って、巨大防潮堤があります。現在の復興の遅れは、千年に一度の大災害に特別法を作らず、通常の法律をあてこんで、被災者、被災地の救済より、省庁の利権確保を優先した結果です。
知事は「同時代の人たちに評価されないのは残念極まりない」と言って、巨大防潮堤を造っている。
村井知事は中央の方針に従い、省庁の縦割り行政を尊重し、住民の声を聴くより先に、官僚の立てた計画を住民に押し付け、従わせることに邁進してきました。村井知事からすると、自分に異をとなえる人はたとえ大臣でもクビになるのだから、自分の命令通りに職員が働き、その指示通りに県民が従うのが当然のことと思っている。これは戦前戦中の軍務官僚の考えと同じで、自分がすべて正しいと思いあがり、異論を封殺していることです。宮城県知事の責務は県民の幸せです。かけがえのない自然、景観を破壊し、海辺の住民の生活を根底からくつがえし、住宅建設を後にして巨大防潮堤建設を優先する。
「評価されない」のは当然なのに「残念極まりない」とはいかにも不遜で、反対者を愚民視しています。
県も市も市民生活に密着した重要な問題を、住民の意見や思いを聴かず決定し、押し付けている。
巨大防潮堤建設だけではなく、大島架橋道路の磯草、浦の浜ルートや朝日町造船団地の決定も同じで、震災直後の混乱時に少数参加者に説明して、その時反対がなければ同意とみなし、当事者を抜きにしてことが進み、震災から5年経ったいま変更ができず、引き返せない状態になっている。
「その時には必ず分かってもらえると信じている」と言っているが、これも不遜な考えです。
たんなる知事の自己満足と名誉心で、巨額の税金を使い、自然を破壊し、結果として海辺に人の住まない巨大防潮堤だけの地域をつくる。 その時に巨大防潮堤は不要なものと言われたら、責任を取れるのか。

村井知事は「自然を破壊し無用な巨大防潮堤を造った知事」として歴史に名を残します。

議員活動報告
熊谷雅裕氏

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更新日: 2016/04/22 -12:48 PM