「介護福祉士」とは、社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年五月二十六日法律第三十号)第42条の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいいます。
今回はデイサービス事業所、通所リハビリテーション(デイケア)で働く介護福祉士の事例として障害者福祉センターの身体障害者デイサービス事業、デイセンターの老人デイサービス事業、介護老人保健施設が運営する通所リハビリテーション(デイケア)を、
通所リハビリテーションで働く介護福祉士の事例として地域の通所リハビリセンターを、
生活介護で働く介護福祉士の事例として介護老人保健施設が運営する短期入所療養介護、
特定非営利活動法人が運営する認知症対応型共同生活介護(グループホーム)を、訪問介護で働く介護福祉士の事例として訪問介護員(ヘルパー)を取り上げました。
今回報告した介護福祉士が働く場の事例はその一部であり、実際は「居宅サービス」、「地域密着型サービス」、「施設サービス」、「介護予防サービス」又は「地域密着型介護予防サービス」を行う事業所、あるい、施設における介護業務の全てを担います。
このように、働く場については多種であり、働き方についても多様です。
例えば、入所介護や共同生活介護で働く場合は24時間入居者と共に生活し、例えば、デイサービス事業や通所リハビリテーション(デイケア)で働く場合は日課の大半を担い、
例えば、障害者デイサービス事業と老人デイサービス事業、通所リハビリテーション(デイケア)で働く場合は日々の状態に応じて自立支援と介護のバランスを調整するなど、働く場に応じて多様な働き方が求められます。
そして、今後は戦後のベビーブーマーが退職を迎える2010年から2015年以降の介護需要の急増に伴い、介護福祉士の需要は増加することが想定され、国内の介護福祉士の供給不足と海外からの労働力の期待が増しています。
なお、国外の介護福祉士受け入れについては、EPA(経済連携協定)調印により受け入れ開始のフィリピン国について、検討を加えることが社会福祉士及び介護福祉士法の附則(平成一九年一二月五日法律第一二五号)抄及び身体障害者福祉法の附則(平成一九年一二月五日法律第一二五号)抄に記述されていますが、2014年1月現在、両法の附則(平成一九年一二月五日法律第一二五号)抄第九条の1は共に未施行です。
1987年に出版された著書(注1)に昭和60年までの国勢調査の結果に基づいて、女性の就労に関して次のようなことが指摘されています。
しかし、国の指定統計データの産業(大分類)、職業(大分類)等で知りうる、例えば、前述の『家族や地域から離れて雇用されて働く』ということを示す『働く場や働き方』は変わらないものの、国の指定統計では知りえない、例えば、「誰のために働くか」ということを示す『働く場や働き方』は、最近(注2)男女共僅かに変化が認められます。
変化の1つは1950年代後半に発生した成人病により高齢な身体障害者が増加し、また、急激な高齢化により高齢者が急増したことから、それらに対応して高齢者等(注3)に対する医療や福祉政策に変化があり、高齢者等(注3)のために地域で働く機会や働く場が増え、従来から存在していた医師や看護師に加えて次の様な人たちが増えたことです。
変化の2つは、木造賃貸住宅密集地区の改善を発端とするまちづくり組織や阪神・淡路大震災の被災地復興で活躍したボランティアや非営利の活動組織、老人配食サービスやホームレスの調査等を通じて政策提言する頭脳集団(シンクタンク)など、地域において新たな働き方が登場したことです。
ここでは、地域の高齢者等のために働く人が増加した背景と、地域の高齢者等を対象に働く場が広がった介護福祉士について事例を通じて働き方の実際を見るとともに、その特徴を整理し、働き方のこれからについて考察します。
注1)菅原真理子:『新・家族の時代』、中公新書、1987.11.1
上記の著書では次の様に指摘されています。(p.93)
「女性の時代」と言われ、これまで女性のついていなかったポストや女性が新聞、テレビで華やかに取り上げられ、女性の職場進出は急に増加しているように思われている。しかし、日本の女性が働くのは今に始まったことではない。むしろ女性の労働力率は戦前の方が高く、戦後一貫して低下していたのが、ようやく昭和50年に底をうって上昇に転じたところであるが、まだ戦前の水準には戻っていない。
ただ女性の働く場が、戦前は田畑であり、家庭であり、家族と共に働いていたのに対し、近年はそれが家庭の外で、雇われて働くようになっているというのが大きな特徴である。
注2)『最近』とは断りがない限り2011年(平成23年)とします。
注3)高齢者と障害者を示します。
高齢者等のために地域で働く人が増加した背景の1つは長きにわたる成人病時代と人口構造の急激な高齢化により、事故や疾病を原因とする後天的な障害を有する40歳以上の身体障害者(ここで呼称した『中・高齢身体障害者』)の自立支援需要とその増加が、とりわけ、その約5割強を占める肢体不自由のリハビリテーション需要とその増加があり、さらに、脳卒中、心臓病などの症状を有する身体障害者がその効果的な対策がないまま慢性患者として放置された結果生じた寝たきり、痴呆症等障害を有する高齢者の介護需要とその増加があります。
そして、介護保険法及び障害者自立支援法創設前の平成8年には、約270万人近くの中・高齢身体障害と約150万人近くの肢体不自由の自立支援需要が、また、その代表としてリハビリテーション需要が、さらに、200万人(1993年)寝たきり・痴呆性・虚弱等要介護の高齢者が存在しました。
背景の2つは、1950年代後半から2010年代前半の長きにわたる成人病時代に行われた在宅福祉重視の高齢者等福祉政策です。
わが国における高齢者等福祉政策の始まりは、老人福祉法(昭和三十八年七月十一日法律第百三十三号))制定された1960年代です。
背景となる長きにわたる成人病時代の高齢者等福祉政策の特徴をまとめると、
などとなります。
④ の在宅福祉重視の高齢者等福祉政策について詳しく見ると、ゴールドプラン及び新ゴールドプランが作成された時期に、「在宅」については『老後に日常生活が不自由になった場合の対応』として施設か、在宅かの2者択一の選択肢の中から高齢者が希望したことが、また、「在宅福祉策」については寝たきりや認知症等障害を有する高齢者、要介護者の増加』という介護サービスの緊急性への対応としてその戦略を根拠に登場したことが、更に、『住み慣れた地域』を対象とすることについては実施主体である市町村が身近な地域にあり、きめ細かいサービスが可能であるということなどが根拠になっています。
この在宅福祉重視策はその後、『介護の社会化』へとつなげられ、「寝たきりや痴呆等障害を有する高齢者を優先する』政策、具体的には医療と福祉が連携した介護保険法及び介護保険事業を中心とする在宅福祉重視の高齢者福祉策へ引き継がれ、また、障害者に対しても在宅福祉重視の障害者福祉策が適用されます。
この過程で、障害者デイサービスを老人デイサービスに適用することで高齢者福祉を障害者福祉に優先する方向が進められ、障害者自立支援法創設後は介護給付が自立支援給付に優先することが定められ、中・高齢の障害者には障害者福祉サービスにおける自立支援の縮小及び廃止が、また、中・高齢身体障害者には自立支援の低下が生じました。例えば、後者については中・高齢身体障害者が身体障害者として従来受けてきた障害者福祉の支援対象から介護福祉の支援対象に変わることになり、障害者としての自立訓練(機能訓練)の機会を失うなどのことがありました。
なお、介護保険法は居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービス、介護予防サービス、地域密着型介護予防サービスに係る施設並びに事業所及び介護福祉関連の人材を増加させました。
そして、このような2つの背景は地域で働く人とその機会を増加させ、また、その働き方に影響を及ぼすことになります。
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更新日: 2014/09/03 -10:50 AM