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豊かな市民大国への整備を - 「論壇」朝日新聞

豊かな生活大国も大切だが、同時に日本は豊かな「市民」大国を目指す必要があるのではないだろうか。豊かさには文化、政府、アイデアなどが含まれ、これらは民主主義的市民社会の成長と切り離せない。現在の日本政府の危機的状況や企業倫理の貧困はこの市民社会の未成熟に原因があり、その成長こそが最大の、緊急の課題だと思う。市民社会の成長には、仕掛けと制度が必要である。ここではそのひとつとして政策研究、提言のための民間非営利独立シンクタンク設立を提案したい。

豊かな生活大国も大切だが、同時に日本は豊かな「市民」大国を目指す必要があるのではないだろうか。豊かさには文化、政治、アイデアなどが含まれ、これらは民主主義的市民社会の成長と切り離せない。現在の日本政治の危機的状況や企業倫理の貧困はこの市民社会の未成熟に原因があり、その成長こそが最大の、緊急の課題だと思う。

市民社会の成長には、仕掛けと制度が必要である。ここではそのひとつとして政策研究、提言のための民間非営利独立シンクタンク設立を提案したい。

この場合のシンクタンクとは、政府からも民間企業体からも独立した立場で、科学的知識と情報をもとに政策研究をし、政策評価や代替案などを示し、提言する機関である。米国の独立シンクタンクはいま日本の財団からの助成を受け、欧米、とくに米国の民主主義政治の中で果たしているこうしたシンクタンクの重要な役割と、日本ではどんな組織なら有効に機能するか研究をしている。

ここで提案するモデルは、現在の主務官庁許認可の公益法人とは異なった民間非営利独立型で、多数の外国人研究者を含む百名以上の常勤研究員が、基金と献金をもとにグローバルな政策の研究と提言を行うものである。日本社会では、合理的な政策研究と提言がなされるための独立の場が必要であり、また、「人々・市民」―消費者として、納税者として、高齢者としてなど―の活動と「声」が、実際の社会を動かし政治に反映される機構と制度が求められている。

このプランについて日本で識者の意見を聴いてみたが、ほぼ共通した意見は、日本の現状では難しく、仮に出来ても日本の政策決定に有効に働き難いだろう、ということだった。特に日本には<官僚シンクタンク>が存在し、これが優秀かつ強力でほとんどの情報を占有、外からの政策提言を受け入れないことがその理由にあげられた。

本来の立法責任者である政治家は政策を作らず語らず、官僚に任せてきた。日本のアカデミズムは歴史的な背景や学問の純粋性の尊重から政策研究を退けてきたこともあって、政策研究分野も研究者も非常に少ない。数ある企業系や営利型シンクタンクは政策提言をするには明らかな限界がある。すなわち政策というものが行政の外で議論され、競争にさらされることがない社会だったからである。

民主主義政治は「人々・市民」の参加が基本である。そこでは、市民が政策課題を知り、政策研究の上に代替案と選択肢が示され、公開の議論がなされ、透明な政策決定がなされなければならない。日本の<官僚シンクタンク>は、市民に公開し、政策形成への参加を高めて行くという本来の使命を果たしてこなかった。

米国のシンクタンクの多くは民間非営利独立の組織である。こうした組織が活動できるのは民間非営利セクターと呼ばれるものがあるからだ。公的資金に依存せず、営利を最大目的とせず、民間の献金・基金をもとに福祉、開発、研究、教育、文化にいたる公益的活動を目指しており、各種の税制度に支えられて経済活動が出来る。認可は他官庁の行政裁量から離れて国税庁のみが行う。独自に政府や私営利企業に改革のアイデアを出すとともに、監視し、また福祉サービスを競っている。この自発的で、多様な、迅速性をもつ活動は、米国の民主主義的市民社会の核といえる。

日本にもこうしたシンクタンクを作ることは、市民社会のためのいわば市民セクターのインフラ設備の第一歩となるはずだ。法律、資金、人材などいずれをとっても容易ではないが、アメリカが数十と作り出してきたこうしたシンクタンクを、日本の経済力と英知で作り上げるのは不可能なことだろうか。

アーバン・インスティテュート研究員、ワシントン在住)
1992年(平成4年)10月23日 金曜日
「論壇」朝日新聞

 

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更新日: 2011/01/26 -11:12 AM