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「よく知らされた市民」のために - Ronza 12月号

私はここ数年、日本に民間非営利セクターの整備と、民間独立型のシンクタンク(政策研究提言機関)の設立を主張してきた。九五年二月には、海外の財団シンクタンクなど民間非営利活動にかかわる世界第一線の論者を日本に招き、民主主義社会におけるシンクタンクの役割を討議する予定である。

私はここ数年、日本に民間非営利セクターの整備と、民間独立型のシンクタンク(政策研究提言機関)の設立を主張してきた。九五年二月には、海外の財団シンクタンクなど民間非営利活動にかかわる世界第一線の論者を日本に招き、民主主義社会におけるシンクタンクの役割を討議する予定である。

アメリカ社会の混沌に見られるように、シンクタンクができればさまざまな政策課題が解決するなどというつもりは毛頭ない。混迷をもたらすだけかもしれない。民主主義とは単一の完璧な社会像を示すものではない。これは変動と発展の(時には後退の)過程を保証するものである。そして民主主義社会はいまのところ三権分立と地方分権によって最善に維持される。しかし制度としてこれだけでは十分ではなく、その下にさらにサブシステムというべきものが必要なのである。

アメリカの前通商代表のカーラ・ヒルズは、私の働くシンクタンクの二十五周年を祝して、「民主主義社会での効果的な公共政策の実施には一般の合意形成が必要である。この合意はよく教育を受けた選挙民の存在と、よく知られた政策決定を通じて国はよりよい政策選択をするだろうという、長く受け継がれてきた信念に拠ってできるものである。この二つの信念―市民の知識の高さと、よりよい未来への約束―こそがわれわれの民主主義の過程のしるしであり、インスティテュートの貢献のあかしである」と語っている。

シンクタンクは、民主主義社会の不可欠の要素、その成員たる市民が、より知らされて高い知識を持つことに貢献しなければならないのである。民主主義の成長と維持のためにはこうした貢献―組織であり機関であり制度であり、そして資金―が、サブシステムとして社会に組み込まれていなければならない。それも、政府や企業から独立したものであることである。これが民間非営利を支える制度であり、独立シンクタンクの使命である。

シンクタンクと同様にメディアもこのサブシステムと貢献に重要な役割と機能を果たす。民主主義と市民社会といった総合性にかかわる課題には、いまの官庁別記者クラブに代表されるメディアの構造では対応できない。

政策の代替案をめぐる論争は、政策決定にかかわる者、市民まで含めて厳しい思考を要求し、混迷の様相にもなるだろう。こうした混迷は、統制され管理されたひとつの声、政府の声しかないことよりはるかに健全であるという認識が行き渡っていくことが不可欠の社会条件である。そして、強固な知に裏打ちされた多様な独立した声のあることが、成長した民主主義社会のあかしであること、こうした市民の力を民間が支え、民間が資金を提供していく必要があること、これこそが他国の市民に日本が戦後五十年、再度軍国国家とならない歯止め力となることを理解させる最良の、唯一の方法であるということ、そして世界の民主主義への貢献となることを訴えていきたい。

上野真城子 アーバン・インスティテゥート研究員
1994年12月
Ronza 12月号

 

 

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更新日: 2011/01/26 -12:34 PM