MONGOLIA Project
Community Studies & Plannning Database
Community Leadership Program for Women
NPOs, Think Tanks & Democratic Institutions in Civil Societies
post_disaster_community_building_in_civil_society
Think_Tank_Society_takarazuka
UCRCA_archives
NPOシンクタンクとCBO Democracy&CivilSociety研究

日本の予算議論と政策決定に欠けるもの

予算は国家政策目標を達成するための重要なメカニズムであり、国家統治能力は予算形成能力
であると言って過言ではない。経済協力開発機構(OECD)が指摘するまでもなく、予算は国の財政
と経済や社会の優先順位に影響する最も重要な政策手段である。

1. 予算政策の形成と決定のための政策分析組織

1-1. 予算政策の重要性と複雑性の高まり

予算は国家政策目標を達成するための重要なメカニズムであり、国家統治能力は予算形成能力であると言って過言ではない。経済協力開発機構(OECD)が指摘するまでもなく、予算は国の財政と経済や社会の優先順位に影響する最も重要な政策手段である。
国家の目標が一致調和して具体的に考えられるのは予算の作成過程においてである。何よりも、国家が使える資源が限られているとき、予算編成においては、部分と全体との関係や、税と支出のつながり、短期から中長期の時間の影響、様々な要求間の優先付けをしなければならない。
深い思慮と検証のない予算においては、政府は需要(ニーズ)と資源(リソース)、資産、負債を均衡させる、強い政策をつくることは出来ない(OECD, 2002)。
日本の予算形成においては高齢化、少子化、東北大震災からの復興、経済不況、増大する自然災害の可能性、地球温暖化問題への対応など、課題は複雑化し増加している。
これらに対して、政府は様々な政策手法を駆使して対応することを求められている。行政府官僚やひとりのリーダー、ひとつの政党の、単発的な急ごしらえの政策では対応できない。
特に社会制度改革のための予算政策の形成には、高度な技術知識と情報を持つ専門家が、集団的な研究体制を組める組織で、継続的にかつ時宜にあった情報を整えていくことが不可欠になっている。
予算政策は、国会が既存・新規のあらゆる政策の評価を行い、将来の人口・社会・経済予測、可能な多様な政策の選択肢と代替案を検討し、合理的な議論を行い、国民的な合意を形成し、決定する必要がある。
これは民主主義社会においての最も困難な作業であると同時に、実は民主主義社会の政治の最も価値ある挑戦なのである。
目標を共有し、政策として合意を形成するためのこの過程には、公開の、活発な政策議論が不可欠であり、特に現在のように、限られた資源(歳入)の中で厳しい選択をしなければならない時、それを人々に伝え、理解を得、合意を得るという政治の責任は非常に重くなっている。
さらには、今や予算政策は、単に一国の国内政策といえるものではない。ことに経済主要国の財政は、市場経済のグローバル化の中で、国内財政の健全性と経済発展、国民の安寧福祉とのバランスを計るという、これまでにない、複雑な環境への対応を迫られている。
一国の予算政策の議論と決定は、国境内に止まらず、隣国、他国からも、理解される合理性を持つ必要があるという、時代の要請がある。
しかし残念ながら、現在行われている国会の予算政策議論は、いまだ、断片的、党派的で、国全体の現在と将来を見通す理念と合理性に欠けている。
これでは、政治家自身はもとより、国民が納得し、合意し、合理的な決定がなされ、政策が確実に遂行され、本来の目的を達成するという、デモクラシーのプロセスを強固に造ることは出来ない。
当論考は米国における予算政策形成プロセスを比較検討しつつ、現在の日本の国家予算議論に欠けているものを明らかにし、具体的な対応策を提起するものである。

PDFをダウンロードしていただくことで全ページをご覧になることが出来ます

この原稿は、「Journal of Policy Studies No.41 (July 2012)」に掲載した原稿のオリジナルです。

編集者: .(このメールアドレスを表示するにはJavascriptを有効にしてください)
更新日: 2012/10/23 -07:11 PM