関西学院大学総合政策学部上野研究室 2009 年度研究演習 (School of Policy Studies, Kwansei Gakuin University)
上野研究室は2006 年に初めてモンゴル研修旅行を行い、その後2007、2008 年、2009 年と4回の研修旅行を実施して来ました。この報告書は4年目の報告です。
上野研究室は2006 年に初めてモンゴル研修旅行を行い、その後2007、2008 年、2009 年 と4回の研修旅行を実施して来ました。この報告書は4年目の報告です。報告書のまとめ にあたって、なぜ海外研修を行うのか、なぜそれが途上国で、なぜモンゴルなのか、そこ で何をしたいのか、するのかなど研修の目的、背景については前回前々回の報告書と「再 びモンゴルへ」などを読んで下さい。
一部繰り返しになりますが、確認しておきたいこと、私のゼミ生への基本的な教育の信念 は、生涯学び考え、行動する人間、関学のモットーである「地球市民」になってほしいこ とにあります。それを中長期の達成目標・アウトカムとして研修旅行を行っています。 私は大学卒業後四十年、横道や回り道をしつつ、そのときそのときどう生きるか生きたい か、何が自分に出来るのか、何を自分に課すのか、学び続け、考え続けてきました。
関学に来た2005 年以前の20 年ほどは、主に米国ワシントンのシンクタンクで「政策研 究」に従事しました。厳しい米国での研究生活のなかで、私は「市民社会」「デモクラシー」 「政策」といった、人生をかけて希求する価値のある課題と出遭いました。今、私がこの 年齢をもって、大学教育の場で出来ること、果たせる責任の一つは、若いあなた方が、人 生に追求すべき、生涯の学びの課題を発見するのを助ける、そうした機会を揃えることで あると思います。
その機会として、出来るならば学生は大学卒業までに、一度でも外の社会を見、学んでく ることが大事だというのが私の確信です。日本以外の国、外の世界を知ることによって、 よさも悪さも、強さも弱さも含めて、私たち自身と日本自身を知ることができます。そし て私たちにとって価値あるものと、他の国や人々にとって価値あるものは違うということ、 異なる価値があり、そして異なっていいこと、違いの中から違いを超えて互いに得るもの があり、国境を超えて、新たなよりよき価値の形成ができるでしょう。
ことに途上国を知ること、知覚し、実感し、そこから日本を考える、見直すこと、そして 世界へ、地球へ、地球市民として考え、何が出来るか、何がなされねばならないのかを考 えることです。私が久しぶりに日本に戻り、関学に来て、優れた潜在力を持つ学生の教育 に当たることになって、途上国研修をゼミで取り組もうと思った理由はここにあります。 なぜそれではモンゴルかについては、前述したものを読んでください。
1 年目でおおまかなモンゴルの状況、ウランバートルの状況を把握しました。そしてこと に都市政策関連ゼミとして、途上国の都市住宅問題が喫緊の取り組むべき問題であること を認識したのが2006 年度の成果でした。
この問題解決のためにミクロで有効なことが何かを探ってみようと思ったのが2007 年の 研修活動と調査の焦点でした。援助に関わるさまざまな機関と責任者の方々からの講義を 受けました。都市問題と住宅問題の基本を都市居住の原点、:コミュニティーに置くことが 非常に重要であることを、開発理論からでなく、踏査を通じて見えてきました。 2008 年度には、日本のJICA による都市マスタープラン研究を知り、その中でことにモ ンゴル科学技術大学のPurev-Erdene 先生のゲル地区改良の提案と活動に出会い、これへの 貢献を考えた調査を行いました。この関係を土台に2009 年度の調査は、コミュニティーの 現状と問題を、子供たち、小中高学生のGIS を使った生活圏調査から探ってみることとし ました。これは今後のすべての援助及び社会改革のカギとなる、コミュニティー・ビルデ ィングということ、すなわちコミュニティー形成と内発的開発、住民による、住民のため の、住民の計画と参加、プロセス、過程をつくりだしていくことが最も大事な行為である という理念に立ち、私たちが出来る、働きかけの一つとしての調査です。 この報告書に見るように、調査と論考はコミュニティーの人々にとって十分に役立つもの になっているとはいえませんが、調査に協力いただいた2 つの学校に感謝しつつ、これか らまた次の新たな展開を試みようと思います。
いつもながらこの研修にご協力いただいた、講義講師の方々、資料提供くださった方々、 私たちの学びの旅を支えてくれた通訳から運転手さんまで皆様に心から感謝いたします。
上野 真城子
編集者: .(このメールアドレスを表示するにはJavascriptを有効にしてください)
更新日: 2010/06/03 -03:43 PM